書庫(長編)

□其ノ弐
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銀時との初対面から一夜が明けた。銀時と別れてからは、手傷を負った仲間を送り届けたりしておりんした。そうして、わっちが家に着いたのは、夜が白み始めた頃じゃった。

家に戻ったあとは、特攻服を脱ぐこともなく、死んだように眠っていんした。再びわっちが目を覚ましたときは、日は高々と上がっておった。そうとうに疲れておったのじゃろう、目を覚ますためにシャワーを浴びてから着替えて街へ出かける。

しばらくして、副総長の蓮華がやってきた。昨日の事を一通り話してから、蓮華は今日のことで話を切り出した。


「総長、今日調べたら他の族はあまり出張らないみたいです。どうしますか?こんなに邪魔が入らないのも久々だし、走りますか?」

「そう、じゃな。最近は喧嘩ばっかりで、走れておらんかったしの。よし、今日は走るとするか。じゃあ、蓮華。他のメンバーにも伝えてくりんせんか」

「分かりました。では、何時に集合しますか?いつものように9時頃からで」

「うむ。昨日、手傷を負った者たちの参加は向こうの都合にまかせる。久々の邪魔なしじゃし、楽しくなりそうじゃな」

「はい!じゃあ、総長。わたしはこれで、みんなに連絡してきますんで」


そう言って、わっちは蓮華と別れた。わっちの心は躍っていた。実を言えば、ここ最近は抗争ばかりでうんざりしておった。久しぶりに仲間たちとバイクを走らせる。それがとても嬉しかった。

そして、集会所では多くの仲間たちが集まっておった。包帯や絆創膏をつけての参加が多く、度重なる抗争の激しさを物語る。

しかし、仲間たちの表情は反対に生き生きとしていた。久しぶりに楽しく走ることが出来るからじゃった。


「みんな、傷だらけじゃな。無理して出て来ずともよかったのに」

「そりゃないでしょ総長。久しぶりに誰にも邪魔されず、走る事が出来るんだから。みんなウズウズしてたんすよ」


仲間たちが見せた笑顔が、先ほどの言葉が強がりでないことを示しておった。わっちは果報者じゃ。こんなに素晴らしい仲間が側にいるのじゃから。


「よいか、みんな。今夜は久しぶりに大手を振って走れるんじゃ。ビッと気合入れて走れ。蓮華、ルートの説明を」

「あたしらが今夜走るのはBルートだ。もし、警察が追い込みかけた場合は、Fルート、Hルートから逃げる事。もし他の族にカチ合っても手は出すな。じゃあ、総長」

「聞いての通りじゃ。わっちらからは決して手を出すな。だが、売られた喧嘩は別じゃ。“臨戦無退”逃げることなく戦え。では、参る」


わっちの言葉のあとに仲間たちの威勢のよい声が聞こえてくる。その時、無数の光がわっちらを照らし出した。その光はどんどんと大きくなっていく。光が大きくなると共に、バイクのエンジン音が鳴り響く。数台ではなく、何十台もの爆音でありんした。
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