書庫(長編)
□其ノ弐
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光の中を2人の人影が歩み寄ってくる。それに続いて、何十人もの集団が歩いてくる。わっちらは戦闘態勢をとった。先頭を歩く一人が話し始めた。
「はい、マァジィカルバナナッ!最高と言ったら?」
その言葉にわっちの仲間達は大音声で答えた。
「うちの総長!!!!!」
「くくくくく、はっはははは。あいかわらずアルなあ。ここのチームはいつになったら正解言うアルか?久しぶりアルな、ツッキー」
「久しいな、神楽」
現れたチームはこの地域でも最強の一角と目されている暴走族『夜兎』。話しかけてきたのは、その3代目総長の神楽でありんした。初代・星海坊主、2代目・神威は骨肉の争いを繰り返し、空位となっていた総長の座を神楽が継ぐことになったそうじゃ。
神楽は可愛らしい容姿とは違い、その戦闘力の高さから“紅の戦鬼”と恐れられておった。真紅の特攻服を身に纏い、多数のチームを圧倒してきた。一人でチーム一つを潰したとか、キレたら全てを破壊しつくすまで暴れ続けるなど、有象無象含めて逸話が多い人物でありんす。
「グラさん、また勝手に集会なんて決めちゃって。みんな、色々あるんだから」
「ぱっつぁん、空を見てみな。月がキレイなんだ。こんなときに走らねえでどうするよ?」
“ぱっつぁん”と呼ばれたこの男は、3代目夜兎・副総長の志村新八。見た目は軟弱そうではあるが、芯はしっかりとしておる。自由奔放な総長、神楽をしっかりと補佐すると共に、巨大チームの夜兎を統率し、鉄の団結と評されるほどの団結力を持たせた。自身も、木刀を用いての戦いには秀でたものがありんした。さらに、キレた神楽を止めることが出来る唯一の存在という噂もある。
「こんばんは、月詠さん。これから走るんですか?」
「うむ。ぬしらも走るのか?」
「はい。神楽ちゃんの思いつきで」
神楽はわっちの隣に座って、酢昆布を口にする。二枚ほど口の中に入れ、食べ終わったあとにわっちの方をジロジロと見つめる。
「どうしたのじゃ、神楽?」
「いいなあ」
「ん?何がじゃ」
「それだよ、その大きいおっぱいだよ。くれ、私にその乳くれ」
「ちょ、何言ってんの神楽ちゃん。すいません、月詠さん。神楽ちゃん、そういう多感な時期なんで」
「フォロー入れたつもりか、メガネ。そう思ったなら大間違いね。ないもの求めるのが人アル」
「くれてやりたいのはやまやまじゃが、そうするには抉り取るしかないでの。心配せずとも、神楽もこのくらいはいずれつくはずじゃ」
「いやアル!今、装備したいアル。今のあたしにボンキュッボン!が搭載されれば、無敵アル!スター状態アル、そこのけそこのけアルヨ」
「いや、仮に搭載されても神楽ちゃんの性格がアレじゃあ」
「何か言ったアルか?ダメガネ。ダメガネはさっさと、メンバーの引き締めやってればいいアル。ほれ、メンバーが騒いでいるアル。さっさと行くヨロシ」
「くっ、こらぁぁぁ、何騒いでんだ、そこぉ」
新八がメンバーの所へ行くと、神楽はわっちに語りかけた。
「今はこうして話しているけど、出会った頃はこんなじゃなかったアルなあ」
「そう、じゃな。出会った頃は互いに殺気立っておったからの」
「今でもはっきりと思い出すアルヨ。ツッキーと出会って、タイマン張ったときのこと」