書庫(長編)

□其ノ弐
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「おい起きろ。解放するから、牢から出ろよ」


一夜が明けて、月詠は銀時の声で目覚めた。まだ眠いのか、月詠はボーッとした面持ちで辺りを見回した。ここは牢内であり、受け入れがたい現実は続いてるとあらためて知った。開かれた牢から出ると、銀時が待っていた。


「よく寝れたか?」

「よく眠れるわけなかろうが」

「まあ、そうだよなあ。俺だったら、絶対に嫌だね。駄々っ子みたいに泣きわめく自信がある」

「変な自信じゃな」

「あ、よだれが付いてんぞ」

「なっ…それを早く」

「嘘」

「ぬ、ぬしという奴はー!」

「ま、まあ、そんな怒んなって。じゃあ、行くぞ」


銀時に連れられ、月詠は雷刃隊の面々が集まっている広場へ行った。


「おーし、みんな集まってるかぁ」

「どしたんなぁ、みんな集めて。余興とかやるには、まだ早いし」

「昨日捕らえた女、こいつはシロだ。捕らえていても仕方ないので、釈放することにした」


集まった隊士たちはざわついた。


「うちらにすりゃ、怪しい部分が多々あるんですが」

「捕らえて次の日に釈放ってのは。もうちょっと、調べてもいいんじゃあ」


異論反論が飛び交う中、銀時は黙ってこれを聞いていた。隊士らの言及が収まりかけたとき、銀時が口を開いた。


「みんなが言うのはもっともだ。だけどな、俺としては怪しいからこそ釈放すべきだと思う。なんだかんだと長居させて、事情知られるよりゃあましじゃねえか。それにこいつは吉原の女らしい。ここでツテ作れば、遊ばせてくれるかもしんねえぞ」


どっと、場が盛り上がった。銀時のこの一言で意見がまとまった。銀時は隊士の一人に月詠の道案内をするよう命じた。立ち去る月詠に銀時は言った。


「達者でな」

「ぬしこそな。世話になった」


共の者と連れ立って、月詠は天紋嶺を下って行く。
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