書庫(長編)
□其ノ弐
2ページ/6ページ
「おい起きろ。解放するから、牢から出ろよ」
一夜が明けて、月詠は銀時の声で目覚めた。まだ眠いのか、月詠はボーッとした面持ちで辺りを見回した。ここは牢内であり、受け入れがたい現実は続いてるとあらためて知った。開かれた牢から出ると、銀時が待っていた。
「よく寝れたか?」
「よく眠れるわけなかろうが」
「まあ、そうだよなあ。俺だったら、絶対に嫌だね。駄々っ子みたいに泣きわめく自信がある」
「変な自信じゃな」
「あ、よだれが付いてんぞ」
「なっ…それを早く」
「嘘」
「ぬ、ぬしという奴はー!」
「ま、まあ、そんな怒んなって。じゃあ、行くぞ」
銀時に連れられ、月詠は雷刃隊の面々が集まっている広場へ行った。
「おーし、みんな集まってるかぁ」
「どしたんなぁ、みんな集めて。余興とかやるには、まだ早いし」
「昨日捕らえた女、こいつはシロだ。捕らえていても仕方ないので、釈放することにした」
集まった隊士たちはざわついた。
「うちらにすりゃ、怪しい部分が多々あるんですが」
「捕らえて次の日に釈放ってのは。もうちょっと、調べてもいいんじゃあ」
異論反論が飛び交う中、銀時は黙ってこれを聞いていた。隊士らの言及が収まりかけたとき、銀時が口を開いた。
「みんなが言うのはもっともだ。だけどな、俺としては怪しいからこそ釈放すべきだと思う。なんだかんだと長居させて、事情知られるよりゃあましじゃねえか。それにこいつは吉原の女らしい。ここでツテ作れば、遊ばせてくれるかもしんねえぞ」
どっと、場が盛り上がった。銀時のこの一言で意見がまとまった。銀時は隊士の一人に月詠の道案内をするよう命じた。立ち去る月詠に銀時は言った。
「達者でな」
「ぬしこそな。世話になった」
共の者と連れ立って、月詠は天紋嶺を下って行く。