書庫(長編)

□其ノ参
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「あれはガキの頃の話だ。俺とコイツは小さい頃から、ある塾の同門だった。そんな中、俺とコイツと桂小太郎ってのと街へと繰り出していったんだ」


3人で街を歩いていると、そこに一軒の料理店が見えてきた。折りよく、3人もお腹が空いてきたので、その店に入ることにした。


「とりあえずは、甘いの頼むか。じゃあ、俺はチョコレートパフェで」

「今回は俺がおごってやろう。何でもとは言わんが、常識の範囲内で頼む」

「ふ〜む、おっ、いちごあるじゃねえか」

「いちごとな。旬の季節を外れておるが」

「季節外れのいちごはうんまいけえ、頼もうっと」

「まったく、浮わついたのしか頼まぬ奴等だ。まあいい、注文を」


桂は店員を呼んで、注文をとってもらう。


「チョコレートパフェと、いちごと、大学いもと最中の盛り合わせ、お願いします」


注文を聞いて、店員が下がっていく。


「汚ねえよ。盛り合わせって何だよ。さんざんバカにして、お前はそれかよ」

「お前みたいに、浮わついたものは頼んでいない。大学いもと最中は昔からの甘味ではないか。それに払うのは俺だ」

「まあ、そねえな言うちゃんな銀時。パフェ食えるんじゃけえ、おとなしゅう待っとれ」



そして、一番始めに小耶太が注文したいちごが到着した。しかし、小耶太は明らかに不満の表情を浮かべる。


「こんなん無理。少ない、イライラするのう。あっ、すんません。いちご、これだけ頼むわ!あ、あと、牛乳と練乳持ってきての」


小耶太は両手を開いて、10人前を持ってくるよう促す。


「あ、店員さん。皿にドーンと持ってきてな」

「おい、小耶太」

「こんなんじゃ、足りんけえ頼んだっちゃ。われらも頼みゃあええ。そこにおわす桂先生のおごりじゃけえ」

「おお、そりゃそうだな。すいませ〜ん、チョコレートパフェ追加で」

「小耶太、俺の意見は聞かずに決めるのか?俺は了承した覚えはないが」


やがて、桂と小耶太の頼んだ品が、彼らのテーブルに置かれた。銀時と桂は絶句した。10人前のいちごの量である。しかし、小耶太は涼しい顔をして、先ほど頼んだ1人前のいちごを加える。練乳と牛乳を加えると、小耶太はスプーンでいちごを潰していった。


「いっやあ、やっぱり、いちごを食うんはこれに限るのう。いちご潰していって、食うまでの間がこれまた好きっちゃねえ」

「いや、お前すげえわ。いちごバカここに極まれりって感じだわ」

「小耶太、もう何も言わん。食べてくれ」


小耶太はいちごを潰し終わると、スプーンでいちごミルクをすくって食べた。甘さが口の中で踊り、小耶太は笑みを隠すことなくシャクシャクと食べていく。


「いやいやいや、ぶちうまいわあ!いちごをたくさん盛って、それを潰して食べる。これがいちごの正しくうまい食べ方だっちゃ」


もはや恍惚の表情を浮かべて食べている小耶太をどうすることも出来ず、3人は黙々と自分の食べ物を食べることに没頭した。

やがて3人は食べ終わり、会計を済ませようと、桂はレシートを見る。そのレシートを見て、桂の表情が青ざめた。
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