書庫(長編)

□其ノ伍
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戦いは終わった。雷刃隊の圧勝ともいうべき結果であった。そこら中に転がっている死体の数々、そして今、地上に立っている者たち。ほんの数時間前までは立場は一緒であった。だが今は、生きる者と生きていた者という線引きが成されている。

坂田銀時は辺りを見回していた。そして、副長である鳥尾小耶太に指示を出した。


「小耶太、死体やら負傷者やら確認してくれ。あと、敵の中には生きてるヤツもいるかもしれねえ。それには、しっかりとトドメ刺しといてくれ」

「おうさ。ほんなら、戦後処理はじめるぞお。手分けしてテキパキとやったれえ」


小耶太の号令のあと、隊士たちは三人一組となって散らばっていった。やがて、戦場のあちこちから小さな断末魔が聞こえてくる。

月詠は呆然として、これを見ていた。銀時はこれを見て、月詠の側に向かって言った。


「お前は俺と組になれ。残敵掃討と生き残ってる仲間の確認だ。勝ったからって、こうしたことは疎かにはしちゃいけねえ」

「わかっておる。ただ、この光景は初めてでありんした。こんなに人が多く死にゆく様を見たのは」

「これが戦争ってヤツだ。キレイ事も何も通用しやしねえ。お、コイツ、まだ生きてやがった」


そう言って、銀時は刀を天人の首筋に突き刺した。虫の息であった天人は事切れた。銀時は一本の槍を手にすると、月詠に手渡した。


「小太刀でやるのは面倒だからな。これを使え。あと、仲間で死んだの確認したら、左腕の合印を取ってくれ」

「合印?」

「うちらでは、左腕に隊名と名前を書いた布をつけてんだ。ほれ、俺にもあるだろ?お前には付けてやれなかったな。戻ったら、合印やるからよ」


断末魔は敵ばかりではなかった。仲間の呻き声も聞こえてくる。隊士らは状態を確認して、救助するか否かを判断する。死んでいる者は合印を取り、虫の息の者や重傷の者にはトドメを刺して、合印を取っていく。

各戦場を回って、味方の死体を一ヶ所にまとめ、穴を掘って埋めてやる。さらに敵味方で使えそうな武具等を剥ぎ取っていく。作業が終わった隊士らが、銀時の元へ集まってきた。

小耶太が取りまとめた合印を銀時に見せた。


「ほれ、これが今日の死者じゃ。二十八名じゃ、今日死んだんは」

「そうか。ご苦労だったな。あと、天人たちのところに死体処理に来いと伝えておけ」

「わかった。あとは、戻るだけっちゃ」

「よし!天紋嶺に戻るぞ。隊列組んで、油断せずに戻って行けよ」
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