書庫(長編)

□其ノ漆
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夜、天人たちがこぞって襲撃をかけてきたという報がもたらされた。雷刃隊の隊士たちは飛び起きて、急いで武具等を装着していく。坂田銀時と月詠も知らせを聞いてから、武具を装着する。銀時は素早く装備が終わると、部屋を出て行った。月詠も装備を終え、白鉢巻をギュッと締めたとき、心に誓った。


(必ず、白夜叉と銀時を向かい合わせてみせる。そのためには、わっちの命が失われようとも構いはしんせん)


月詠は部屋を出るときに、ある言葉が浮かんだ。それは誰からの言葉であったか、今は忘れてしまったが。


君がため、心を尽くす


月詠はこの言葉を心に強く刻みつけ、部屋を後にした。

隊士たちは既に集まって、複数の集団に分散されて、各々の役割について説明したのち、定められた場所に向かった。月詠は前回と同じく、銀時と共に戦場へ向かうことになった。

天人たちは不意を衝いたと笑い合いながら、天紋嶺を登っていく。長い間、天人たちはこの天紋嶺を攻め落とせないでいた。この天紋嶺は、突き出たキリのごとく、天人側の喉元深く食い込んでいる。これを除かないかぎり、天人側は攘夷派諸隊に有効な打撃を与えられないからだ。

一方、雷刃隊側は天人側の位置を確実に把握していた。元々、天然の要害であった天紋嶺は、雷刃隊の手によって強固な要塞へと変わっていたのだった。要所には罠を仕掛け、有利に戦闘が展開できるようにしてある。

待ち構えていたのは、鳥尾小耶太率いる先駆け隊である。


「副長、天人が来ました。そろそろではないですか?」

「まあだじゃ。獲物がたくさんかかったのを見計らって、網を仕掛けるんじゃ。罠を仕掛けておるんじゃけえ、やるならでかくなきゃあの」

「副長、どんどんと天人がやって来ました。後続も続々と」

「そろそろ頃合いか。よし、時雨を落とす用意せえ」


小耶太は隊士らに目くばせをして、罠の発動を準備させる。わらわらと集まってくる天人たち。人数は数十人から数百人へとあっという間に増えていった。


「よおし、時雨、落とせえええ!!!」


小耶太の号令のもと、隊士たちは引っ張ってあった縄を切り落とす。
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