書庫(長編)

□其ノ漆
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すると、天人たちの上空から無数の竹槍が降り注ぐ。隠れるところのない天人たちは、次々と竹槍によって、串刺しとなっていく。縄を切られて、上に括られていた竹槍たちが勢いよく下へと落下する。


「散れ!固まっておっては、えじきになるだけだぞ。早く、ここから離れろ」

「まぁだまだ、時雨が止むのはもちっと後じゃけえ。しばらくは撃たれてくれや」


小耶太の言葉通り、竹槍はしばらくの間、天人たちの頭上に降り注いだ。時雨の言葉通り、一時的に竹槍の雨は続き、やがて止んだ。時雨が収まったあと、地面には刺さった竹槍と、無数の天人たちの死体が転がっていた。

小耶太は刀を抜くと、天人たちに向かって駆け出した。やはり、いち早く戦端を開いたのは小耶太であり、戦意が萎えた天人たちに小耶太の攻撃は激烈と言うべきものだった。これに続いて、隊士たちが天人たちに向かっていった。

その頃、銀時らが待ち構える所にも天人たちはやってきた。


「姐さん、天人たちがやってきました。数はけっこうな数になります」

「わかっておる。まだ待ちなんし、どうせ仕掛けるなら一人でも多いほうがよい」

「何だ、分かってんじゃねえか」

「わっちにだって、それくらいは分かっておりんす。ただ、罠がどういうものかは知らぬがの」

「なあに、単純なモンさ。だが、不意を衝かれる敵さんにとっては、恐ろしいモンだろうぜ。あとよ」

「何じゃ?」

「小耶太にも言われたと思うが、絶対に俺の前には立つんじゃねえぞ。その時、お前の命の保障は出来ねえ」

「ふ、わかっておる。心配するでなし、ぬしこそ自分の身を心配したらどうじゃ?」

「言ってくれるじゃねえか。もし、俺がおかしくなっちまったら、隊士らの取りまとめは任せたぜ。お前なら、しっかりとやってくれるだろうしな」


月詠は妙な違和感を感じた。しかし、まずは敵を撃退すること。これに全力を注がなければならない。ここで自分が死ぬわけにはいかない。命を懸けるべき、命を燃やすべきときはその後に待っているのだから。

銀時は罠の用意を隊士らにさせていた。天人たちが十分に罠の範囲に入ってきたのを見計らって、銀時は隊士らに命じて縄を切らせた。


「よし、金剛、開始しろ!」


縄を切った後、勢いよく丸太が天人たちの前に迫ってくる。巨体を擁する天人たちも、唸りを上げて向かってくる巨大な丸太には敵わなかった。丸太に当たって、天人たちはドミノ倒しのように崩れ落ちた。一回だけではない。その後も轟音を上げて、丸太が天人たちに襲い掛かる。直撃を受けた者たちは、即死しており、直撃を免れた者も大小の手傷を負っていた。
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