書庫(長編)
□其ノ参
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神楽の前にいる男どもをしりぞけて、わっちはついに神楽と対峙した。神楽の下には、倒したわっちの仲間たちがうめき声を上げながら倒れていた。
「なかなかやるアルなあ。骨のあるいいヤツらアル。そんなヤツらを束ねる頭がお前カ?」
「その通りじゃ。百華二代目総長・月詠でありんす!このままでは、ラチがいかぬ。どうじゃ、ここは頭同士で戦うというのは?」
わっちの言葉を聞いた神楽は、こちらを見返してくる。既に返り血を顔に浴びていた神楽の姿は“紅の戦鬼”と言われる通りの姿じゃった。わっちは久しぶりに武者震いを覚えた。この武者震いが示してくれた。このタイマンは今までにないほどの激しいものになることを。
「ふふ、いい面構えしてるアル。今までに見たことのない、勇ましい面をしてるアルネ。その面ぁ、変えてやりたいアル」
無邪気に笑いかけたと思った次の瞬間、神楽はわっちの視界にはいなかった。ドスッ!わっちの腹部に激痛が走った。見れば、わっちの懐深く神楽が飛び込んでおった。
「気を抜いちゃいけないアル。一撃で終わってしまうアルからなあ。こんなもんネ、“栄光ある孤立”を謳ってる百華の頭ってのは」
「ぐっ、はっ、ああぁぁ!!!」
今までにない痛み、まさに神楽の一撃は必殺の一撃といってよいものじゃった。わっちは耐え切れず、膝を落とした。
「な、何じゃ。あっという間に一撃をもらってしまいんした」
何とかして立ち上がろうとするわっちを、神楽は上から見下ろしていた。何とかして立ち上がったわっちは神楽に言った。
「追い討ちをかけると思うたがな」
「驚いたアル。大概のヤツは一発で終わったはずなのになあ。お前、なかなかの場数を踏んでるアルナ。とっさにも関わらず、少し後方へ退いていたとは。全く気付いていないはずなのに、素晴らしい反射神経してるアルなあ」
「お褒めにあずかって光栄じゃな。しかし、ぬしは後悔する。ここで追い討ちを仕掛けなかったことをな」
「必要がなかったアル。それに這いつくばってるヤツに追い討ちをかえるなんぞ、私の流儀に反するネ」
「なるほどな。ぬしとなら、話が合いそうじゃなあ」
「簡単アル。私らのチームに入ればイイネ!そうしたら、好きなだけ、お前の話を聞いてあげるヨ」
「ふんっ!それは傘下に入るという事じゃろ?それでは、ぬしと対等に喋れぬ。わっちら百華は、どこかのチームの傘下なぞお断りじゃ!対等に付き合おうとするチームならば、話は聞いてやるがの」