書庫(長編)

□其ノ肆
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「腕っぷしは本当に強いそうで、一人で何十人という敵に対しても涼しい顔してやっつけてしまうとか。あと一年生時には西高の番をはっていたとか」

「それは本当じゃろうな。あの時のヤツの態度は堂々としておった。まったく相手を眼中にしてはおらなんだしの」

「西高の番ではありますが、群れることを好まず、一人で行動することが多いそうです。一匹狼的ポジションというんでしょうか。それでいて、西高の人間が危機にあるときは駆けつけるという部分も持ち合わせているとのことで」

「ほう、それはなかなかじゃないか。一匹狼でありながらも、人が困っているのを放ってはおけぬとは。簡単に出来ることではないと思うがの」

「総長・・・何かベタ褒めですね」

「ん、いやいや、贔屓目に見ているわけではないぞ。情報を聞いていれば、そういう感想になってしまうんじゃ」

「さて、ここからは異聞というか、噂というか、憶測というか、というお話ではあるんですが」


ここから有象無象の噂話が始まった。銀時ほどの名が知れた男であれば、実像に尾ひれ背ひれがつくのは珍しいことではない。それが大きければ大きいほど、その男の存在感というものは増していくというものでありんす。



「腕っぷしの強さから“西高の白夜叉”、“銀狼”とも呼ばれていますが、実は甘いものに目がないという噂が」

「は?甘いもの?・・・そういえば、また会ったらパフェでもおごれと言われた気がするのじゃが」

「度々、甘味処で出没しているという情報もあります。甘いもの好きの傾倒ぶりが凄まじく、糖尿病寸前という噂もあって、他校では甘いもので金時を糖尿病にしてから攻めようという計画もあるとか」

「本当か?糖尿病寸前といえば、そうとうの甘党になると思うのじゃが」

「糖分が足りないとき、襲った相手は数十人だったそうですが、ものの見事に打ち倒したそうです。しかも、虫の居所が悪かったのか、ほぼ病院送りにされたそうです。呼び名に関しても、“甘味王”、“荒ぶる糖尿病予備軍”などが。あ、あと、あの銀色の髪は糖分を摂りすぎてのことで、舐めると砂糖の味がするとか」

「・・・・・・なるほどの。強くて甘党、というわけか。まあ、実際に会ってみねばわからぬのう。イマイチ、掴みどころがないというか。蓮華、ご苦労じゃったな」


銀時の情報を集められるだけ集めてみたが、多くの情報があったとしてもなかなかにわからない部分がある。だからこそ、こういう時には実際に会ってみることこそが大事であろう。
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