書庫(長編)
□其ノ捌
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雷刃隊は戦後処理を淡々と行っていた。坂田銀時は隊士らが行っている作業を見つめていた。この戦いで銀時は自分の中にある白夜叉と向き合うことができた。白夜叉も自分なのだと悟り、白夜叉を屈服させることに成功した。
銀時はふうっと一息ついた。こんなに満ち足りた気分はいつ以来であろうか。そんな心境に自分を導いてくれた存在が、自分の元に駆けてきた。
「銀時、作業はほぼ終わった。おっつけ、小耶太も駆けつけてくる」
「ん、ああ、そうか。じゃあ、隊士をまとめ終わったら戻るぞ。とはいっても、まだ天人らがいないとも限らねえ。警戒しながら帰るぞ」
「わかっておりんす」
月詠、ひょんなことから雷刃隊に参入してきた女性である。身のこなしも素早く、武術の心得もある。そして、今回の戦いでは自分と白夜叉を命がけで向き合わせてくれた。
銀時は月詠の顔をまじまじと見た。その視線に気付いた月詠は、怪訝そうな表情で銀時を見返す。
「どうかしたか?銀時。わっちに何かついておるか?」
「ん、ああ。何でもねえよ。ご苦労だったな、小耶太が着くまで待ってろ」
「???わかった」
見入ってしまった。今は満月が地上を照らし、比較的相手の顔が見える。銀時は満月に照らされた月詠の姿をキレイだと思って見ていた。
鳥尾小耶太も合流してきた。雷刃隊は集合し終わったあと、後ろに警戒の兵を配置して天紋嶺の自陣へと戻っていく。特に天人らの逆襲はなく、無事に雷刃隊は自陣へと引き上げることができた。
隊士らは軽く武具を片付けたのち、自身の寝所へと戻っていく。それを見守っていた銀時に小耶太が話しかける。
「銀時」
「ん、どうかしたのか?」
「よかったな。俺らじゃどうにも出来んかったけえ、このままじゃと思っとったが」
「そうだな。今回はやばかった。あのままだったら、俺というものが白夜叉に飲み込まれるとこだった」
「それをつくちゃんが救ったと。ほんに強い女じゃねえ、つくちゃんは。あの銀時に正面切って向かっていけるとは。逆に言えば、俺らにはそこまでお前に踏み込む勇気がなかった。とんだ臆病者じゃなあ」
自嘲しながら笑う小耶太の肩を、銀時はポンポンと叩いた。
「お前は臆病者なんかじゃねえよ。俺だって、向き合うのを嫌がってたんだし。ただ、あいつの覚悟がハンパなかった。それに尽きるだろ」
「そうじゃな。まあ、これでお前の憑き物も取れたことじゃし、万々歳っちゃ」
「そうとも言えねえ。天人らの圧力が強くなってる。このままだと、どの道うちらはジリ貧だろ。何とかこの状態を覆すほどの策が欲しいんだけど」
「う〜む。お、つくちゃんじゃ。さて、邪魔モンは消えるとしようかい。じゃあの」
「おい、このバカたれ!さっさと逃げんじゃねえよ」
月詠が現れて、銀時は頭をかきながらこれを出迎える。月詠はさっきからよそよそしい態度をとっている銀時が不思議でならなかった。
「小耶太と話しておったが、もうよいのか?わっちの事なら気にせずに話しておればよいものを」
「話は終わったよ。みんな疲れてんだ。うちらもさっさと戻ろうぜ。外で長話することはねえ、それに疲れたろ?」
二人は並んで、自室へと戻っていった。