書庫(長編)

□其ノ捌
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自室へ戻った二人は自身の装具を外した。銀時は肩をぐるぐると回すしぐさをした。月詠も羽織を脱ぐと、ベッドに腰を下ろした。


「ほんと、ありがとな。お前には感謝しても感謝しきれねえ借りができちまった」

「気にするでなし。わっちは背中を押しただけ。あとは銀時しだいじゃったから、結局はぬしが成し得た。それでよいではないか。それにぬしには・・・色々と助けてもらいんした」

「ああ、お前がいたときに俺が助けたってのか?とはいっても、俺自身はそれは知らねえしな」


銀時と月詠は色々と語り合った。様々な事を語り合い、わかりあうことに二人は夢中になった。

月詠はどこか乖離していた感がある、この時代の銀時がぐっと身近に自分の方へ近付いたと感じた。

銀時も自身を救ってくれた人物が、別の世界とはいえ、救っていたのだという話を興味深く聞いていた。


「のう、銀時」

「ん?」

「わっちはここへ居続けてもいいのかの?ぬしらと共に戦っていっても」

「ああ、お前が望むのならいくらでもな。俺としては、いてくれなくちゃ困るんだけど。それくらい、お前はここに必要な存在なんだよ」

「そう言ってもらい素直に嬉しい。わっちの居場所はここ、なんじゃな。ならば、居させてもらいんす。もう、ぬしらが要らぬと言うてもわっちは居るからの」


そんなこんなで喋り続け、二人が眠りについたのは夜も深くなった頃だった。

そして、二人が起きて外へ出たとき、小耶太がこれを見て歩み寄ってくる。


「おいおいおい、お二人。昨日、もしかして盛っちょったんじゃないか?」

「はあ、お前何言ってんだよ」

「あとで鏡を見てみい。クマができちょるぞ。いくら戦いの後でたぎっておると言うてもな。それを互いにぶつけちゃあいかんちゃ。そねえな事して、天人らが来たらどねすんな」

「ばっ、お前は何を言って・・・」

「小耶太、それは何の話をしておりんす?」


「まあまあ、あのなあ銀時」


小耶太は銀時の肩を抱いて、ひそひそ声で銀時に話した。


「あんなあ、銀時。まあ、やるなとは言わん。けどな、ほどほどにの。じゃねえと、色々と差し障りがあるけえ」


銀時はこれを聞いて、小耶太の頭をヘッドロックの状態で締め上げた。苦悶の声を上げる小耶太に、焦った表情で締め上げる銀時。その光景に月詠の口元に笑みが広がる。景色が変わった。ここが戦地であることを忘れるくらいに、雷刃隊、ひいては銀時がキラキラと輝いているように見えた。
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