書庫(長編)
□其ノ壱
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腸内細菌。生まれたての赤ん坊には腸内細菌は存在せず、無菌状態である。それが外気に触れ、人間に触れることにより、腸内細菌が発生する。最終的に人間は何十兆もの細菌をその体内に宿すに至る。
この物語は、そんな腸内細菌の争いを描いたものである。
「銀ちゃん、最近偏食がすごいアル。いい加減にしないと病気になるアル。何かの」
「お前みたいな暴飲暴食クイーンに言われたくねえんだけど。いいんだよ、食べられるときに食べる。じゃねえと、食べれねえときに後悔しても遅いんだからな」
「いいように言ってるけど、ただのわがままだよね。銀さん、たまには健康とか考えてください。じゃないと」
「お前らは俺のお母さん?どんなに言ったって、甘味好きは治んねえからな。甘味断ちなんて、俺にとっては死刑宣告に等しいからな」
とある甘味処でのやりとりである。坂田銀時の甘味好きは、前々からであったが、最近ではそれに拍車がかかっていた。神楽と志村新八は、半ば諦めに近い表情で銀時を見ていた。
そしてここからは、銀時の腸内の話となる。銀時の腸内は大きく2つの勢力が、いつ終わるとも知れぬ争いを続けていた。
善玉菌と悪玉菌。この二大勢力による争いは、いつ終わるともしれなかった。今、この瞬間も戦いは続いていた。善玉菌と悪玉菌のイメージキャラクターは銀時である。分かりやすく、悪玉菌の銀時の髪の色は黒髪である。
「ちょー、よいさあ」
「怯むな!押し返せ。悪玉菌なんぞに押し込まれてんじゃねえ」
「ふはははは。この圧倒的優位を覆せるわけがない。おとなしく、俺ら悪玉菌に屈しろ」
「お前らに屈するわけねえだろが。善玉菌が悪玉菌に負けたら、この腸内は腐りきってしまうだろが」
「とことん強情なヤツらだ。安楽をとらずに苦難を選ぶとは。まあいい。あれ見てちょうだいよ」
悪玉菌は後方を指差した。わらわらと悪玉菌が集まってくる。この様子を見た善玉菌は言葉を失った。ただでさえ形勢は不利だと言うのに、さらに増援がやってくるとは。善玉菌らは己の勢力の貧弱さと、相手の強大さを頭に描いた。折れてしまいそうな心を抑えて、悪玉菌に弱みを見せぬよう心がけた。
「ふはははは。この体の持ち主は実にいい。我ら悪玉菌にとって、都合のいいものを与えてくれる」
「くっ、どうすんだよ。ただでさえ苦しいのに、あんな加勢まで来られて。うちらにはいねえのかよ。増援ってやつが」
「耐えるしかねえ。俺らは負けられねえんだ。たとえ増援の見込みがなくたって、守り抜くんだよ。この腸内の正常化のために」