書庫(長編)
□其ノ伍
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坂田銀時、わっちはヤツに勇気を振り絞って話しかけた。話しかけるのに、わっちはドキドキしながらであったのに、ヤツは平然とそれを受け流した(ように思えた)。
「じゃあさ、店は俺の行くところでいいか?もし、オススメがあるんなら、そっちでもいいけど」
「い、いや。ぬしの行きたい所でよい。特にオススメの店があるわけではないし」
「そっか。じゃあ、行きますか。ついてこいよ」
銀時はそう言って歩き出した。わっちはそれに付いていった。しばらく歩くと、一軒の喫茶店が見えてきた。わっちらは店内に入り、店員の案内で席に着いた。銀時はすぐにメニューに目を通していく。
「よし決めた。お前はもう決まったか?」
「い、いや。まだ決めてはおらぬ」
「そっか、まあ、ゆっくりと決めてくれりゃあいいから」
「ぬしは早いな。すぐに注文を決めたようじゃが」
「行き付けの店だからな。もう、食うのは決まってるし」
銀時はそう言って、窓から見える景色を眺めていた。わっちも待たせるのは気が引けるので、気になったメニューを頼むことにした。銀時は慣れた口ぶりで、店員を呼んだ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「チョコレートブラウニーパフェ。いつもの銀さんエディションでね」
銀さんエディションとは何じゃ?と、心の中でツッコミを入れつつ、わっちも注文することにする。
「では、このベイクドチーズケーキとコーヒーセットを頼みんす」
「かしこまりました。しばらくお待ちくださいませ」
店員が去ったあと、銀時はわっちに視線を向けたあと、口を開いた。
「まともに話すのは今日が初めてだよな。俺は坂田銀時、よろしくな」
「わっちは『百華』の総長、月詠でありんす。以後よしなに」
「思ったんだけど、その言葉は何なの?」
「ん?ああ、わっちは幼い頃、色街で育ったゆえ、自然と廓言葉で話すようになったんじゃ」
「え、色街育ちなんか?幼い頃にかあ、じゃあ一人で暮らしてんのか?」
「いや、親代わりの女と、その息子と共に暮らしておりんす」
「じゃあ、今、お前が暴走族のアタマやってるのはどう思ってんの?」
「わっちがレディースをしておるのは知っておりんす。『一度きりだから、思い切り悔いないように』とな」
「理解あるみたいだな。お前の母ちゃんは」
銀時は遠い目をして呟いた。その目は、どこか悲しそうに見えた。そこへわっちらが注文した品が到着した。