涙の別れ
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「土方く…ん」
声が出ない。こんなにも彼の名前が言えないなんて今まで無かった。
「トシーどうしたの?」
隣の子は誰?土方君の名前を呼ばないで。
薄々思っていた。私みたいなのが土方君と付き合える筈ないって。
遊びだって。
自然と涙が出てきた。
「咲羅…」
土方君がそう呟く。
でも、私は涙を流したまま精一杯の笑顔で
「別れよう」
それだけを伝えた。
もしかしたら、引き留めてくれるかもしれない。
「私、この人と付き合うから」
そう言ってモテ男君から一度離れ、手を握る。
「素敵な彼女さんだね。応援するよ」
嘘。ホントは付き合って欲しくなんか無い。
私が良いって言って欲しい。
「……そーかい…紅月サン…今までありがとよ」
何で?何で引き留めてくれないの?
この日…私の恋は終わった…
砕けたガラス細工
いっそガラスみたいに…心だけじゃなくて体も砕けてしまえば良いのに