涙の青春

□04
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「……ん、」


目覚めたら、保健室特有の消毒液の匂いがした。


「目、覚めたか?」

横を見ると、土方先生が安心した表情をしていた。


「いきなり倒れるからびっくりしたぜ。」

「すみません……」


どうやら土方先生は私を保健室まで運んでくれたようだ。

我慢していたのか、先生はポケットから煙草を取り出す。


シュッという音と共に煙草に火がついた。

その瞬間見えたのは……


−左薬指の指輪−

「せんせ……」

「あ?煙たかったか?すまねぇな」

「い、いえ。違います。指輪……してるなぁって」




これか?と言いながら左手を見せる。


―ズキリ―


頭が痛い。

やめて、見せないで、

私の知らない人を思うのは、やめて


知らない内に嫉妬している自分に嫌気がさす。


「先生って、まだ新任でしょ?結婚したのっていつ?」


誤魔化すように質問をすれば、先生は微かに微笑んで、話始めた。


「出会ったのはお前と同じ、高3だったよ。夏に、図書館で会ったんだ。大学1年でプロポーズした。」


話をする土方先生は、私なんか見てなくて、きっとその奥さんを思っているのか、いつもとはまったく違う顔をしていた。









こんなに、胸が苦しくなるのに、諦められないのはどうして?


 

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