涙の青春
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「……ん、」
目覚めたら、保健室特有の消毒液の匂いがした。
「目、覚めたか?」
横を見ると、土方先生が安心した表情をしていた。
「いきなり倒れるからびっくりしたぜ。」
「すみません……」
どうやら土方先生は私を保健室まで運んでくれたようだ。
我慢していたのか、先生はポケットから煙草を取り出す。
シュッという音と共に煙草に火がついた。
その瞬間見えたのは……
−左薬指の指輪−
「せんせ……」
「あ?煙たかったか?すまねぇな」
「い、いえ。違います。指輪……してるなぁって」
これか?と言いながら左手を見せる。
―ズキリ―
頭が痛い。
やめて、見せないで、
私の知らない人を思うのは、やめて
知らない内に嫉妬している自分に嫌気がさす。
「先生って、まだ新任でしょ?結婚したのっていつ?」
誤魔化すように質問をすれば、先生は微かに微笑んで、話始めた。
「出会ったのはお前と同じ、高3だったよ。夏に、図書館で会ったんだ。大学1年でプロポーズした。」
話をする土方先生は、私なんか見てなくて、きっとその奥さんを思っているのか、いつもとはまったく違う顔をしていた。
どんな仕草も好き
こんなに、胸が苦しくなるのに、諦められないのはどうして?