涙の青春
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それから先生は色々な話をしてくれた。
高校生時代はZ組だった事、その時の担任が銀八先生だったこと。
今いる保健室の先生ー高杉先生―と同期だということ。
−あれ?−
そう言えば先生、奥さんの事は何も話してくれない。
「先生、先生の奥さんって、どんな人?」
ただ、興味本意で聞いた。
それだけだった。
なのに……
「……とっても素敵な女性だよ」
貴方はそんなに悲しそうな目をするのですか?
「奥さんの名前って……「神崎!!」」
その時、土方先生じゃない声が聞こえた。
「高、杉……先生、」
「神崎、治ったんなら帰れ」
「……はい」
確かに体調は良い。でも私は先生の奥さんの事が気になって仕方なかった。
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「……危なかったな」
「高杉、助かった。」
気にするなと言い、高杉は俺に煙草を差し出す。
「驚いたな。まさか、あんなのがいるなんて。」
「あぁ。」
「お前は、まだ吹っ切れないのか?」
自然と口を紡ぐ。
そんなことお構い無しに高杉は話続ける。
「お前は、まだ偽りの結婚をするつもりだ?」
「……煙草、ありがとな。」
逃げるようにして保健室を出た。
結局、俺は何も進んじゃいない。
ただの、臆病者だ。
「……どうすりゃ良いんだろうな」
なぁ、教えてくれよ。
−咲羅−
貴方しか見えない
紫煙がユラリと揺れた。