涙の青春

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ドキドキする心臓をギュッと押さえ付けて息をのむ。

今、貴方を起こしたら、貴方は名前を呼んでくれますか?


―大丈夫、今言ってくれたもん。『好き』って、『愛してる』って―


「せんせ、起きて。か、ぜ引くよ」


自分でも驚くほど声が震えてる。

いや、声だけじゃない。指もだ。

こんなに緊張することなんて滅多に無いのに……


「んっ……」


先生の体がピクリと動いた。


「あっ、あぁ……神崎か?」

「っつ!!!!」


起こしてくれてありがとな。


なんて少し笑いながら先生が私に言う。


なんで?どうして、どうして、どうして?


「なんっ、で」

「どうした?神崎」

「なんっで名前、呼んでくれないの!?さっき、呼んでくれたじゃん!!」

「おまっ、何言って……」

「好きって!!愛してるって言ってくれたじゃん!!」



あぁ、私って嫌な女だ。

土方先生困らせて、何が楽しいのよ。

こんな涙でぐちゃぐちゃな顔、見せられない。


溢れ出す気持ちを先生にぶつけて、準備室を出る。


振り向くな。走れ、走れ走れ走れ!!


「きゃっ!!」


下ばっか見てたから誰かにぶつかった。


「ごめっ、なさい」

「あれぇ?咲羅じゃん」

「ぎん、ぱち」



目の前には、少しくたびれた白衣があった。









可愛い生徒の1人なの






 

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