涙の青春

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「っ―!!」

「これが、あいつら2人に会った出来事だ。まぁ、俺もあんまり知らないんだけどな―」


銀八の言葉が終わらないうちにまた教室を飛び出す。


あぁ、今日は走ってばっかりだ。

でも、今は独りになりたい。



「うっ、ふぅ、うぇっく―!!」


階段の隅にうずくまる。


一度に沢山の情報を頭に入れたせいか、整理できない。



―知らなかった、先生には昔本気で愛した人がいたなんて―

―知らなかった、その人とは一時期兄妹だったなんて―

―知らなかった、その人のために、先生は全てを捨てて駆け落ちしたなんて―

―知らなかった、その人はもう亡くなってたなんて―

―知らなかった、先生はその人の夢を叶えるために先生になったなんて―

―知らなかった、その人の名前が『咲羅』って名前だったなんて―



「そんなのっ、」


―勝てる訳無い―


「勝てっこ、ないじゃん」


先生がプロポーズした日に咲羅さんは亡くなった。


あの日から、先生の時は止まったまんまなんだ。


「指輪、咲羅さんに送ったやつなんだ……」


先生の奥さんは、咲羅さんなんだ。



「せん、せぇっ!!」


だから先生は私のこと名前で呼ばないんだね。


私が、咲羅さんじゃないからなんだね。


「うっく、ひっく、……きぃ……」

あぁ、私は不毛な恋をしてしまったみたい

「好きぃ……す、きぃ!!」






流れる涙と一緒に、

好きの気持ちも

消えてしまえば良いのにね



 

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