涙の恋
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煩く蝉が鳴いている。
「分かんない…数学なんて…」
課題が終わっても遊べないのが受験生の定めで、私は机の上の教科書と睨めっこ。
土方君の家に泊まってから、1日日がたち、今日は図書館にも行ってない。
つまり、私は丸々一日土方君と顔を合わせていない。
「数学滅べー」
と言ってみても全く机の上の教科書は滅ばない。
そんな状況で、ふと風で捲れた数学のノートに目が行く。
ノートの至る所に男の子特有の字が書いてあって、改めて土方君が立派な男の子だと思った。
−あぁ…そうか。
こんなに時間が長く感じるのは…
隣に土方君が居ないからだ−
ほんの少しだけで
ほんの少しだけで、彼が大切な人になってしまった。