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□確かに恋だった
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「アク、セラレータ、―ッさん・・・」

「・・・ンだよ」


気まずい。言いにくいがこの状況は非常に気まずい。

ついさっき愛穂姉ちゃんの家にお邪魔していたら愛穂姉ちゃんはラストオーダーちゃん(彼女は"ミサカ"って読んでって言ってたから"ミサカちゃん"なのかな?)と買い物に言ってしまった。


そんな訳で今、主がいないこの家にいるのは私と―――



この不機嫌さMAXでソファーに寝転んでいるアクセラレータさんだけだ。



初めてあった時は

(この人、キレイ)

と思った。いや、ホントに。

透き通るような肌とさらに肌より白い髪の毛は光を浴びてキラキラと輝いている。


体は細くて、触れてしまえば壊れてしまう、まるでガラス細工のような儚さがあった。


私より体重は軽いかもしれない(怖くてそんなことを聞く勇気は無いけど・・・)


そんな彼と二人っきりなのは初めてで・・・

正直何をすれば良いか分からない。


(雑誌、持ってくれば良かったなぁ・・・)


そう思ったが時すでに遅し。


思いきって声をかけたものの、不機嫌な声で返され冒頭に至る。



「・・・チッ」


しばらく沈黙が続いたあと彼は気だるそうにソファーから立ち上がった。


どうやら彼の機嫌をますます損ねてしまったみたいだ。

申し訳なさで頭がいっぱいになる


でも立ち上がった姿も


(キレイ)


と思ってしまうのはなぜだろうか。


彼の足はキッチンへと向かい、私の視線も自然とそちらへ向かう。


しばらくすると漂ってくるコーヒーの香り。



その香りを少し楽しんでいると


「オイ」


と唐突にかけられたぶっきらぼうな彼の声。


顔をあげれば


「何ジロジロ見てんですかァ?」

と眉間にシワをよせる


また彼を怒らせてしまったみたいだ。


「ごめッ―なさッ―」


謝る途中に差し出されたのは私のお気に入りのマグカップ。


中には温かいカフェオレが入っている。


「あっ、あの―」

何でカフェオレが私の目の前にあるのだろう。彼は自分のコーヒーを作りに行ったはずだ。


だって彼の目の前には彼専用のマグカップがありもん。

「オイ」

「ッ!ヒャイ!!」

彼の私を呼ぶタイミングはまったく心臓に悪い。お陰で声が裏返ってしまったみたいだ。まったくもう。

「・・・カフェオレなんか初めて作ったから、味の期待はするなよ」
ぶっきらぼうに言った彼の耳は少し赤くて、


(照れている、の、かな?)

そう思い、微笑むと、


「何笑ってんですかァ?」

と睨まれた。それはもう、凄まじく恐ろしい顔で


「いや、その、ごめんなさい」

慌てて謝ると今度は彼がクックッと喉をならし笑った。



(あ、



笑顔、初めて見た)


その笑顔はどんな物よりもキレイだった。


でも笑われっぱなしはこっちも辛い。


「そ、そんなに笑わないで下さいよ・・・」

と言えば

「悪りぃ」

と素直に言葉が帰ってくる。

あれ、会話がいつの間にか成立している。


「お前、笑ってる時の顔の方が断然良いと思うぜ」


そう言われて一瞬で私の顔は茹で蛸見たいに真っ赤になった。


それを見てまた笑う彼。


私は下を向いて、


「バカ・・・」


と一言だけ呟いた。


「なンだと?」

「ヒィ!」




 
 

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