未来日記
□09
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「なーんちゃって!引っ掛かった引っ掛かったぁ!」
「……はぁ!?」
そこにいたのは少女ではない。
紛れもなく、咲羅だった。
今まで俺が接していた少女は何処かへ行き。代わりに咲羅が帰ってきた。
どういう事なのか分からない。
数回瞬きしても景色は変わらない。
「はぁ!?だって、お前、今、えっ!?」
「冗談冗談。私がトシの事忘れる訳無いじゃない。」
サイズがピッタリの服の肩が、ズルリと落ちるような感覚がした。
腕には力が入らない。
ただ呆然としていると咲羅が笑いだした。
「あははは、でもさっきのトシの顔、面白かったぁ!もう傑作!!ビデオに撮れば良かったぁ!!」
……、俺は何も答えない。
「――って、あれ?……あのー」
咲羅は流石に不安になり、俺の顔を覗き込む。
俺は怒りがフツフツと込み上げていき、前髪で表情が隠れる。
肩が小刻みにぷるぷると震えるのが分かる。
ギチリ、奥歯か音をたてるまで歯を食い縛る。
嫌な予感を感じとったのか咲羅は探りを入れる。
「ごめん、本気で怒って、る?」
「お前、俺がどれだけ心配したか分かってんのか!?ア゛ァ!?」
「キャァァァァァァァア!!ちょっ、待って!ギブギブ!!私病人!!ここ病院!!」
凄い形相でトシは私を追いかける。
ヒィ!!後ろに鬼がいるよ!!
恐怖の鬼ごっこは、トシが私の頭を叩いて(スコーンって良い音がした。)終了した。
少しスッキリした顔のトシは、明日も来ると言い、病室を後にして行った。
私は呼吸を整え、ベッドに入る。
「……ごめんね。」
あぁ、私はトシを傷付けてばかりだ。
「っう、うぁ、あくっ、うっ、」
声が漏れないように枕を押し付けて私は泣いた。
君を愛してるから
だから、私は嘘を付いた。