未来日記

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絶対助かる。

そう祈りながら手術中のランプが消えるのを待つ。

何時間たったのか分からない。

何日か、はたまた何分かぼんやりとした頭で考えている時、ランプが消えた。

勢い良く立ち上がると、中から先生が出てきた。

心なしか、表情が暗い。


「残念ですが……」

残念?何が残念なんだ?

「最期に会ってあげて下さい。」

「嘘だっ!!咲羅が死ぬわけ無いだろ!!何かの間違いだろ!!」

「お気の毒ですが……」


咲羅の顔は眠っているみたいだった。

死んでるなんて、嘘みたいだった。



俺はその後の記憶が曖昧だ。気が付いたら、咲羅の通夜だった。


咲羅の高校時代の友人が沢山来てた。

だけどクラスが違う俺はその輪に入れなくて、いつしか抜け出してた。



人が来なさそうな境内の裏っ側で煙草を吸う。


「あー……苦げぇ……」

煙草ってこんなに苦かったっけ、紫煙が目に染みる。


「悪い、煙草1本くれね?」

「あっ、どうぞ」


いきなりかけられた声に驚きながらも煙草を差し出す。


「悪いね」

そう言って微笑むのはかつて俺の担任だった銀八。


「お前、行かなくて良いのか?」

「咲羅の知り合いなんか誰も知らねぇからな。」


そう言うと興味の無さそうな返事が返ってくる。


「あのな、前、咲羅から言われた言葉なんだけどな」

「んだよ。さっさと言えよ」

「『本当に悲しい時は、涙は後からやってくる。』だ、そうだ」

「だからなんだよ。」

「だからさ、



泣くなよ」


「っ、泣いてねぇよ!!」

「あっそ。じゃあ俺行くわ。煙草サンキューな。」



銀八の姿が見えなくなった瞬間、こらえていた涙がすべて零れた。


「うっ、ぅあ、っく……ぅぁぁああああ――!!!」

プライドとかそんなものはとっくに無かった。


ただただ声が枯れるまで泣き続けた。


君が居ない事が

こんなに辛いなんて

思ってもいなかった。



君が居ない世界は、

時が止まったみたいだ。


 

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