涙のリング
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「ごめんなさい……私は、貴女に許されない事をしたわ。でも聞いて。」
「今さら何を聞けって言うのよ!!私はッ!あなたを本当の母親だと!ずっと思ってたのにッ!あなたは、あなたはーッ!「違うわ!!!」」
「咲羅……貴女は私の可愛い可愛い娘よ。大切な」
「嘘よ!!私が本当のお父さんの子供だから可愛がっているだけでしょ!」
「違う、違う、違う!!貴女が例えあの人の子供じゃ無くても、私は貴女を愛しているわ!!」
「……っ!!!」
沈黙。誰も言葉を発する事はない。
『俺の』母親は咲羅を静かに抱き締める。
「…………最後に、ひとつ聞かせて下さい……。」
「私にとって、あなたはなンなんでしょうか。」
すると母親はゆっくりと微笑んだ。
「大切な、大切な娘よ。例え血が繋がって無くても、貴女が私を母親として認めなくても、私の娘は貴女1人だけよ」
「……なさい……ごめんなさいっ……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
咲羅は壊れたオモチャのようにただ『ごめんなさい』を繰り返す。
それを母親が優しく抱き締める。
ようやく、ようやく『家族』が戻って来たんだ。
でも、それは『紅月』の家族が戻って来ただけで、
そこに『土方』の俺の居場所は何処にもなくて……
光と闇は対の存在
この場に居てはいけない気がして、俺は病室の外へ出た。