涙のリング
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「よう。」
「……なんだ、お前か。」
病室を出て直ぐに出会ったのは高杉だった。
「ちょっと面貸せや」
そう言って高杉は歩き出す。
着いた先は屋上だった。
「吸うかぁ?」
差し出された煙草に手を伸ばす。
馴れた手付きで紫煙を吐き出すと、奴は喉をならして笑った。
「何が可笑しい。」
「いや、別に?」
そう言いながらまだ喉をならして笑う高杉。しかし、突然真剣な顔をした。
「兄妹じゃなくって良かったですね、なんて絶対に言わねえからな。俺とお前が兄弟なら、俺も咲羅と結婚する権利は有るからなァ。」
「……ハッ、言ってろ。咲羅は俺を選んだんだよ。」
その時、一瞬、高杉は哀しそうな瞳をした。
「俺は、あいつに重い足枷を付けちまった。俺の名前を呼んだあいつは、もう元に戻れねぇって顔してた。
結局、俺は『兄』にも、『恋人』にもなれなかったって訳だ。」
「そんなことねぇよ。あいつの『兄貴』は、お前1人だけだよ。」
「……嬉しい事言ってくれるじゃねぇかよ。」
「『恋人』は俺だけどな。」
「ぜってぇ奪ってみせる。」
「ハッ、上等だ。」
キミへの宣線布告
「トシっ!!」
「ほら、お姫様のお迎えだぜ。王子様。」
「高杉……サンキューな」
「…………フン……」