romanzo

□la cara luce(TOV レイユリ)
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周囲の崩れ行く音をまるで他人事のように聞いていた。もう一度自分に死が訪れたらやっと終わりを迎えられる安堵が心を占めるだろう…ずっとそう思っていたのに。

「また甘えてしまったか…」

最期の我が儘と思ってもらえるだろうか…そう微かに期待しては自ら打ち消す。仲間に避難を命ずる彼の声には確かに怒気が混じっていて、それが自分に向けられるならまだしも、恐らく彼自身に向けれたものだったということに大きく動揺している自分がいた。







汗が夜風に当たって冷えるのを感じる。目指すは帝都ザーフィアス、帝国騎士団長の下だ。城の抜け道を通り、暗い廊下を音を立てずに忍び込む。重い扉を開けると、さも自分が来た事をに気付いていたかのような鋭い眼光に貫かれた。

「遅かったな。」

「申し訳ございません。」

「いい、報告しろ。」

ここ数日の各地の情勢とギルドの動向、そして凛々の明星とエステリーゼについて話終わると、彼は満足そうな笑みを見せて頷いた。

「そうか。いくつか邪魔は入ったものの、期は熟した。3日以内に折をみて姫を連れ戻せ。他の者の処分は…」

「私にお任せ願えませんか。」

「ほう、裏切った仲間を自らの手で切るとは酔狂なことだな。…いいだろう、場所はこちらで用意してやる。」

「ハッ。」



空が白む前になんとか一行の滞在している街までたどり着き、ほっと息をつく。呼吸を整えて宿の戸に手を掛けた瞬間、鋭い視線を感じて振り向くと首筋に剣を突き付けられた。

「どこほっつき歩いてた。」

部屋を抜けた時に気付かれていたのか。あら青年、と声をかけながら両手を挙げる。

「おっさんちょーっと夜のお散歩してただけよう。物騒なものはしまってちょーだい。」

「ちょっとの割には長すぎるんじゃねぇの。これ以上の詮索はしねぇ…でもおかしな真似しやがったら、」

「ハイハイ分かってますってー。最近の若人は恐いねぇ。おっさんちびっちゃいそうよー。」

ひらひらと手を振って笑うと、彼は剣を鞘に戻し丸くなって眠る愛犬の傍らに腰を下ろした。一応許されたのかね…疑わしきは罰さず、といったところか。

「…最近変だぜ、あんた。」

「なにが?」

「ほっといたら…」

いや、なんでもねぇ…そう言って黙り込むなんてあんちゃんも十分変だと思うけどねぇ。どこか調子を狂わされて居心地が悪い。下手にもめる前に退散させてもらおう。

「じゃ、おっさんはそろそろ寝るわ。」



外に青年を残し宿の部屋に入ると、カロルが大の字になって眠りこけていた。落ちた布団をかけてやって自分も隣のベッドに身体を預けるが、ひやりとしてなかなか寝付けない。

あと3日…ね。

自分としては短いほうが好ましいが、そう思う理由には触れたくなかった。窓から見える星はいつもと変わらず遥かに美しく光り、そうあってくれさえすればいい。指の隙間から確かめるように覗くと何故か心が落ち着いて、いつの間にか疲れが瞼を下ろしてくれた。









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