romanzo
□l'ultimo bicchiere(ツバサ 黒ファイ)
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「にゃ〜ん」
にゃー
「にゃーお」
にゃにゃー
「…おい、」
「あ、黒わんにゃー」
何してんだよと襟首を捕まれ、家の中へと引きずり込まれる。ぶーぅ。新しい友達と話の途中だったのにぃ。
「みんなはー?」
「それぞれの部屋に転がして来た。…ったく、あいつらといいお前といい、弱いなら飲むな。」
そう唸るようにつぶやくのを見て、もっと面倒くさがらせたくなった。彼の太い首に巻き付いて、寝たふりを決め込む。
深い溜め息が聞こえたと思ったら、突然身体ががくんと揺れてソファに放られた。酷いよう…眠ってるからってこれはちょっと乱暴じゃないの黒様。少しの沈黙の後、近付いてくる君の足音が聞こえて身体を固くした。
「あいしてる」
「えっ!?」
びっくりして飛び起きてしまった。今の聞いた?絶対普段は言わないような事言ったよね?
「やっぱりタヌキだったな。」
意地の悪い顔でニヤリとされたけれど、今はそれどころじゃない。ねぇねぇ、君も酔ったりするの?ねぇねぇねぇねぇ!
「もう一度聞きたいか?」
こくこく頷く。
「じゃあ、もう一杯付き合え。」
お酒の相手が欲しいからだって分かってるけど、そう言ってくれるなら何杯でも飲めるよ。元々オレ酒には強いんだもん。
「…落ちたか。」
先刻から会話の返答が「んー」だの「おー」だのといい加減になり、今や隣ですうすうと寝息を立てている魔術師を眺める。
こいつのグラスに最後の一杯が残してあるのは、さっきの言葉をもう一度聞いて面白がりたいといったところだろう。俺のグラスに最後の一杯が残してあるのは…
「お前が寝るのを見届ける為じゃねぇんだがな。」
今宵の月にグラスを掲げて、残った酒を一気にあおる。二度目の言葉を毛布と一緒にかけてやると、寝言ながらも幸せそうに、にゃあと鳴いた。
次頁あとがきです。