romanzo
□la cioccolata(振り 浜泉)
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ココアを飲むとなんだかほっとする。甘くて、でもちょっと苦くて、コーヒーとかよりなんとなくとろっとしてて、口から入ったあったかいのが、すうっと腹の中におさまっていくのがわかる。
「美味しい?」
あんまり甘すぎても、逆にココアの分量が多すぎてもいやだ。砂糖とココアの分量をきっちり計量しろとは言わないけれど、いいな、と思えるバランスは確かにある。
「ねぇ泉、美味しい?」
こいつだって別にスプーンで何杯ーとかやってるわけではない。遠目からちょっと観察していたら、容器からちょいちょいっと振り入れてやがって、なんだかむかついた。
「泉ってばー。」
ずい、と視界が浜田の顔で遮られて、互いの唇が触れ合う。ココアは既に飲み込んでしまっていたけれど、その残り香をさらってやろうと、温かい舌が入ってきた。
ちゅ…ちゅっ…
絡めあって、絡まりあって、味わう。甘く感じるのはココアのせいなのか、それともキスの味なのかは、正直もうよくわからない。
「ぷは!」
「っはあ…ったくうっぜぇな。」
「ちょ、それはないんじゃね?」
しょぼんとする、してみせる表情に、もう罪悪感など感じない。むしろしれっとしてやった方がつまらなそうな顔をすることにはとっくに気が付いているのだから。
「…で、美味しい?」
「さあ?」
このくだらない展開を、何度繰り返したっていい。だって俺が音を上げたら、たぶんこいつすっげぇむかつく顔するし。それにそう思えるほどにココアがあったかくて、外が寒いのが悪いんだ。
とろり、甘くてほろ苦い。浜田のココアとキスの味。
次頁あとがきです。