romanzo
□la fatica(TOV レイユリ)
1ページ/2ページ
ぼふっ
「ぐえっ!」
ここ数日の強行軍を終え、宿になんとかたどり着いたのは昼過ぎのこと。この後は久々の自由行動ということで、メンバーはそれぞれ買い物に出たり町を散歩したりと思い思いに過ごす事になった。自分はすることも無いので宿でダラダラ過ごすと告げると、ちびっ子や若人達には不本意にも憐れみの目を向けられた。
静まり帰った部屋の中、割り当てられたベッドに寝そべる。仰向けからごろり俯せると、疲れが身体から滲み出ていくような気がした。いよいよ日暮れとともに瞼が下がり、いつの間にかまどろみと寄り添っていた、はずだったのに。
「なっ…なによぉいきなり!?」
急に背中に加わった重みは、子供のものではないようだ。この気配、この匂い、この温度。一度はびっくりしたもののその後心底安心するのは、全部がたったひとりを示しているからだ。
「…あの〜う」
「……」
「おっさん寝てたんだけど〜」
「……」
…あれ?どうした?
ぐりぐり、
「お、おっ、」
ぐいぐい、
「ふあ〜いいわ〜」
ぐっぐっぐっ…
「最高。」
「…だろ?」
確かに自分は疲れていたから、マッサージは気持ち良かったし、嬉しかった。
…うん。でもね、
「おいで、ユーリ。」
横を向いて腕を上げると、青年は出来た隙間に猫のように収まった。抱え込んで優しく撫でてやると、彼の呼吸が深くなっていくのが分かる。
(…素直じゃないあんちゃんねぇ。)
ぶっきらぼうだけど、他人には誰より気を配っている。だからといって、相手に貸しがある訳では無いのに、自分に気を遣わせる事を、彼は酷く嫌うのだ。
つまりは、もう少し手放しに頼ってくれたって罰は当たらないのに…と、思う。
「…お疲れさん。」
空の色は刻一刻と変化しているはずなのに、何故か時間の流れはそれまでよりゆっくりと感じられる。
すうすうと聞こえてきた寝息に便乗してレイヴンが再び眠りに着いたのは、そのほんの少し後の事だった。
次頁あとがきです。