romanzo
□la droga(TOV レイユリ)
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「ユーリ…なんかその気ない?」
放たれた言葉が胸に突き刺さる。
全くの図星だった。さっきからセックスに集中出来なくて、だからといってやっぱりやめようと言い出すなんて出来無くて。行為に流されておけば自分もその気になるんじゃないかなんて、甘い考えに身を委ねてしまっていた。
「さっきからなんか違う事考えてるでしょ?」
そう言って眉を下げるレイヴンの瞳は、申し訳なさそうに、そしてどこか切なそうに揺れて、臥せられる。
そんな顔させたい訳じゃないんだ。
そう言いたいのに、代わりに涙が零れそうになる。胸が詰まって、言葉が出ない。今考えていることこそが、杞憂だって分かっているのに。
「今日はもう、寝ようか」
顔に出たのだろうか。言わせてしまった俺の罪悪感を払おうとしてくれるかのように、優しく大きな手が何度も何度も頭を撫で、強く抱きしめてくれた。
何も言わない。何も聞かない。きっとこの男は、俺が何を思おうが、全て飲み込んでしまうつもりでいるのだ。自分の許容量を超えて制御出来ずにいる俺と違って、重ねた歳の差を見てしまった思いがした。
またいなくなるかもしれないなんて、どうして思ったりしたのだろう。
生まれてしまった不安の種は急速に心を蝕んで、自分でも訳の分からない思考回路を組み上げていく。眠って、目が覚めて、それでも隣にいてくれたなら、安心することが出来るだろうか。
触れる肌の温かさが、たまらなく愛しくて、怖い。
そっと首を伸ばして詫びにもならないキスをすると、優し過ぎる笑顔が返ってきて、さっきよりも胸が苦しくなる。胸元にぐりぐりと頭を擦り付け深く息を吸うと、レイヴンの匂いで満たされるのが分かった。
「ワンコみたいな甘え方ねぇ」
クスクスと笑われて、むっとした表情を返す。大きく息を吐いて、やっと自分の気持ちが落ち着いたような気がした。
もしかしてこれは、やばい薬みたいなものなのかもしれない。
キスして、抱きしめて、
何処へもいかないで。
もう、アンタ無しでなんていられないんだ。
次頁あとがきです。