連続短編

□友達以上恋人未満
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冬になると彼女は毎週末やってくる。

"友達以上恋人未満"

「こんにちは。」
玄関のドアを開けるとスーパーの袋を持ったなまえがいた。
「…」
「鍋しよ。鍋。」
「ヒロん家行けば?」
折角、寝てたのに。
分かってた事だけど起こされて不機嫌になってる自分がいる。
「ダメだよ。藤君じゃなきゃ!」
どういう事だろう。
冴えない頭で考える。
「ま、あがれば?」
「お邪魔しまーす」
少し位、特別視してくれているんだろうか。



「ね。鍋は一人より複数でしょ!」
「じゃあヒロ達も呼ぶ?」
「それじゃダメなの。」
「ダメ?…ま、いいけど。」
なまえの言う"ダメ"の意味が良く分からない。
冬の週末は実家じゃ必ず鍋だったようで、この時期、週末だけ俺んちにやってくる。
逆に言えば、鍋のシーズンを過ぎれば全くと言っていいほどなまえからは音沙汰無しになる。
…利用されてんのかな。

「なんで夏とかは来ねぇの?」
「夏?ここまで来るのが暑いから。」
「…じゃあここに住めば?」
なまえは手を止めてじっと俺を見た。
「会社から遠くなるからヤダ。」

ばっさり一刀両断されてしまった。
結局、脈無し。
やっぱ利用されてんのかな…
「藤君が私の家に住んでくれるなら、いいよ。」

それとも、ただ鈍いのか…?
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