連続短編

□たけくらべ
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あなたの全てが変わっていく。

"たけくらべ-SIDE A-"

「お。俺、藤君越した!!」
「声変わりしてねぇのに身長だけ生意気だべ。」
「ヒロヒロ、"オラにみんなの身長を分けてくれ!!"」
「チャマはそれ以上は伸びねぇな。」
「えぇ!?酷くね!?てか秀ちゃんに言われたくない!!」


「あ、なまえちゃん!」

藤くん達の教室を通り過ぎようとした時、ヒロに呼び止められた。
そしてニコニコしながら私の方にやって来た。

「あー…あれ、えー…身体測定か!」
「そーそー。俺ね、藤くんの背ぇ越した!」
「成長期ってやつですか。」

チラッと奥に立つ藤くんを見たら素知らぬ顔で友達と話していた。

「あのさ、小さい頃の約束ってアレまだ有効?」
「?」
「ホラ…背が高くなった時ってやつ。」


はるか昔。
幼稚園生の頃、些細な約束をした。
『ねーねーなまえちゃんは俺と藤君どっち、好き?』
『…分かんない。二人とも好き!』
『どっちか!どっちかって言ったら!?』
『えーと…背の高い方。』

今思えばなんて適当な事を言ったのだろう。

『背ぇ同じ位だよな。』
『じゃあどっちか先に背が高くなった方のお嫁さんになって。』
『うん、分かった。』

それからずっと2人は似たりよったりの身長だった。


「ヒロと話してると首が痛くなる。」
「ふぇ!?それは…ごめん。」
「いや、別にいいんだけどね。」

またチラッと藤くんの方を見る。
こちらの事は歯牙にもかけないといった具合で振り向きもしない。
そういえばまた告白されたとか。
私の事は昔の様に名前では呼んでくれない。
…ヒロは呼んでくれるんだけどな。

どんどん変わっていってしまうんだね。

縛られるのはもう止めよう。

「有効。有効だよ。」
「ホント?」
「うん。」
「じゃあ、…えっと…俺と付き合って下さい。」
「嫁じゃなくていいのね?」
「ふぇっ!?あぁそっか!!えっと…」
「ふふっ。テンパってる。…よろしくお願いします。」
「うん。よろしく。」

ヒロと付き合うことにしたのはほとんど藤くんへの当てつけだったけれど、ヒロの事は昔から好きだったし、同じ位藤くんのことも好きだった。

だからヒロを好きになることで自分の気持ちが整理できるような気がした。
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