連続短編
□青空キャンバス
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セミの声。
真夏の日差し。
"青空キャンバス"
「お、」
そっとそのままドアを開け教室を除くと、教室の隅に生徒が見えた。
その女生徒は大きなキャンバスを前に一心不乱に筆を動かしている。
窓際で揺れるカーテンはベールのようで、風に大きく舞い上がる。
少女の髪もまた風に遊ばれてなびく。
陽光を切り返し淡く光るその姿はとても綺麗だ。
思わず息を飲むほどに。
少女がこちらに気付く様子はない。
そっと教室に入り、適当な席に着いて彼女を見つめる。
今邪魔をしてはいけない。
そんな気がした。
さっきまで聞こえていた音は不思議な事に全く聞こえない。
真空管の中にいるように完全に遮断されてしまった。