Le monde a rallonges

□放たれた妖精
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エヴァは、周囲に複数の人が居るという状況にひどく戸惑っていた。
今まで屋敷の奥に隠されて育てられていたエヴァの傍には、常に唯一人の人間しか居なかった。
その為、人の聲(コエ)に酔ってしまいそうなのだ。

今までは進んで人の聲を聞き、その相手を見下してきたのだが、CBのメンバーにそれはしたくなかった。
せっかく檻から抜け出し、辿り着いた場所なのだ。
不快にさせることは避けたい。
彼らのプライバシーを守るためには、聲を聞かなければ良いのだが、エヴァにその気が無くても、聲は勝手に聞こえてくる。
丁度テレビが付いた部屋に居るように。

エヴァは人の聲を聞きたくなくて、自ら部屋にこもっていた。
耳を塞いで部屋の隅に蹲っている姿は酷く滑稽だろうと分かっていたが、こうする他に方法を思いつかなかったのだ。
そうして、今度は自主的に閉じこもってしまったエヴァの許に、アレルヤは毎日訪ねてきた。


「エヴァ、おはよう」

「うむ」

「今日は少しだけ外に行かないかい?」


沈黙が続く。


「駄目かい?」


苦笑したアレルヤへの返事は、扉の開閉音だった。
数日ぶりに見たエヴァの姿に、アレルヤはほっと笑みを浮かべた。


「ありがとう」


そんなアレルヤからエヴァはぱっと視線を逸らした。


「………おはよう」


ぽつりとそう言ったエヴァは、伺うようにちらちらとアレルヤを見上げる。
エヴァが挨拶を返してきたのは初めてだ。
アレルヤは驚いて目を軽く見開いた。
そしてその一瞬後に、嬉しそうに微笑んだ。


「いこうか」


エヴァは聲を聞かぬよう、きゅっと心を引き締めた。




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