s/story4

□肖像画の行方
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革命裁判所から・・・いや、ロベスピエールから

連絡はない。ロザリーが不審な尾行者に

脅かされた話はついぞ、彼女から聞き及ばず。

<おれへの嫌がらせだったのか?>

それよりも気になるのはロザリーの出産だった。

なのに・・・今朝、妻はこんなことを

言い出す始末だ。

「あのね、ベルナール、少し行きたいところが

 あるの。あるものをあるところに届けたいの」

「なんだよ、ある、ある・・・?って。どこだ」

「実はオスカルさまの肖像画ををジャルジェ家

 に届けたいと思うの」

「え!あの肖像画をか?!おまえが命より

 大切にしてた絵を?」

「奥さま、ジャルジェ夫人にお返ししたいの」

「実はね・・あの絵はもう1枚あるのよ。

 あたしが持っていようと思うのはその複製」

 ベルナールは返答のしようがない。

貧しい暮らしの中で妻はどうやって絵をもう

1枚描かせたのか?不審に思えど口に出せず

「一人では行かせられない・・・・」

「あなたの仲間に画家の方がいたでしょ。

 ダヴィッド何とかいう方。彼が描いて

 くれたのよ」

「ああ、分かった。ロザリー、君は無理だ。

 おれが届けるのではダメかね」

「ええ?あなたが?私が一緒に行かなきゃ

 ・・・将軍に成敗されちゃうわ」

さもありなん・・・黒い騎士だった過去を

天真爛漫に笑いネタにする妻が可愛いと思う。

<それにしてもあの画家がオスカルの絵を

 描いたとは・・・。画家にしては野心が

 あってジャコバン党員になったような男>

「ありがとう、ベルナール・・・嬉しいわ」

妻と違ってベルナールは気が重い。

会いたくない人々・・・なんでロザリーは

こんなことを思いついたんだ、子を亡くした

母親たちにその子の在りし日の勇姿を

見せて楽しいか?違うだろう。

全くロザリーはどうかしているぜ。

彼は悶々鬱々、胸の奥で

ロザリーをディスることしか出来なかった。

<ジャルジェ家に・・・・行きたくねえええ>
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