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□肖像画の行方
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革命裁判所から・・・いや、ロベスピエールから
連絡はない。ロザリーが不審な尾行者に
脅かされた話はついぞ、彼女から聞き及ばず。
<おれへの嫌がらせだったのか?>
それよりも気になるのはロザリーの出産だった。
なのに・・・今朝、妻はこんなことを
言い出す始末だ。
「あのね、ベルナール、少し行きたいところが
あるの。あるものをあるところに届けたいの」
「なんだよ、ある、ある・・・?って。どこだ」
「実はオスカルさまの肖像画ををジャルジェ家
に届けたいと思うの」
「え!あの肖像画をか?!おまえが命より
大切にしてた絵を?」
「奥さま、ジャルジェ夫人にお返ししたいの」
「実はね・・あの絵はもう1枚あるのよ。
あたしが持っていようと思うのはその複製」
ベルナールは返答のしようがない。
貧しい暮らしの中で妻はどうやって絵をもう
1枚描かせたのか?不審に思えど口に出せず
「一人では行かせられない・・・・」
「あなたの仲間に画家の方がいたでしょ。
ダヴィッド何とかいう方。彼が描いて
くれたのよ」
「ああ、分かった。ロザリー、君は無理だ。
おれが届けるのではダメかね」
「ええ?あなたが?私が一緒に行かなきゃ
・・・将軍に成敗されちゃうわ」
さもありなん・・・黒い騎士だった過去を
天真爛漫に笑いネタにする妻が可愛いと思う。
<それにしてもあの画家がオスカルの絵を
描いたとは・・・。画家にしては野心が
あってジャコバン党員になったような男>
「ありがとう、ベルナール・・・嬉しいわ」
妻と違ってベルナールは気が重い。
会いたくない人々・・・なんでロザリーは
こんなことを思いついたんだ、子を亡くした
母親たちにその子の在りし日の勇姿を
見せて楽しいか?違うだろう。
全くロザリーはどうかしているぜ。
彼は悶々鬱々、胸の奥で
ロザリーをディスることしか出来なかった。
<ジャルジェ家に・・・・行きたくねえええ>