短編
□ちょーだい
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「ねぇ、君僕に何か用事はないの?」
なんだコイツ…ι←(ひどい)そう思うのも無理はないと思うだっていきなり人の目の前に現れて、避けて歩こうとしても邪魔をしてくるし…
なんだコイツ…ι←〔二回目(笑〕
「ねぇ、聞いてる?」
『えぇ、聞いてますよ。あなたに用は無いです。失礼します。』
「ヒドいね。それが幼なじみに対する態度?」
『そんなの今更でしょ?ていうか邪魔何だけど。』
(なんで私がこんなひねくれ不良君の相手をしなくちゃならないのよ)
私とコイツは幼なじみだ。
昔はコイツに淡い恋心を抱いていたが、今となってはそれが恥ずかしく、一生封印してしまいたい記憶だ。
「ねぇ、ホントに何にも用事が無いの?」
『しつこいですね。回りくどい言い方しないで何が言いたいのかハッキリ言ってください。』
「…………………今日は何月何日?」
『2月14日』
「…………………………………………………今日は何の日?」
『…………………………………………………………………………………バレンタインデー?』
何なんだホントに…バレンタインがどーした。
確かにクラスの女子が可愛らしくラッピングされたチョコなどを持って友達や意中の人に渡している姿がちらほら見られたら。
だが友達も少なく(自分で言ってて虚しい)意中の人もいない私には縁の無いイベントだ。
『それがどうかしたんですか?』
「…………」
なんだか知らないけど拗ねちゃったみたいだ。
ホントに何なんだコイツ…
「……………くれないの?」
『へっ?何ですか?』
「……くれないの?チョコレート…」
予想外。
この一言しか出てこない…
だって有り得ない!!
あの「最恐」と恐れられている雲雀 恭弥が頬をほんのり赤くしてチョコレートをねだっているのだ。
一瞬夢かと思って頬をつねってみたが、どうやら夢では無いらしい。(痛かったι)
『えっ…なんで?』
「………………なんでって…」
若干ショックを受けたようだ。でもコレはホントに疑問だ。
なんで今更好きじゃなくなった人にチョコレートをあげなくちゃいけないんだ。
「…だって君僕の事好きだって昔言ってたじゃないか」
『そうですね。確かに昔はそうでした。』
「なんで過去形なんだい?」
『そのままの意味だからです。』
「………つまりもう僕のことは『好きじゃありません』……」
なんだか面倒な事になった。
まさか私まだ自分の事を好きだと勘違いしていたとは…
「…………///」
そうですよね。恥ずかしいですよね。
「…………………義理でもいいから頂戴…」
『……はっ?』
なんだその上から目線。すごくムカつく。
だいたい義理でいいからってなんだ。義理以外に何があるというのだろうか…
「ねぇ、聞いてる?」
『えぇ、聞いてますよ。でもあげる理由は無いし、何より今から用意するなんてムリですよ』
「イヤだ。頂戴」
イヤだって…お前はガキか!!
ホントにもうヤダ。
コイツのこういう身勝手なところが嫌いになった原因だ。
『ハァ…この際だから言わせて貰いますけど、あんたのそーいう身勝手なところが嫌で好きじゃなくなったんです。わかったらもう関わらないでください』
溜まっていたモノを吐き出すが如く早口で言い切った。
かなりスッキリした。が、言った後で後悔した。
考えてみると、あの雲雀に喧嘩を売ったのだ。
しかし当の本人は黙って俯いている。
恐る恐る顔を覗いてみると今にも泣き出しそうな、苦しそうななんとも言えない表情をしていた。
「………嫌いなんて言わないでよ」
『えっ!?』
「嫌いなんて言わないでよ…」
今目の前にいるのは本当にあの雲雀 恭弥なのだろうか…
何だろう…上手くは表せないが母性本能を擽られるというかなんというか、なんだかコイツが可愛く見えるぞ。
なんだこれ、私おかしくなっちゃったのかな?
なんて思っている間に自然と腕が動いて、彼の頭を撫でている自分がいた。
「えっ?!」
『えっ!?』
(何やってるんだろう私…)