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□ash
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「…あ、東方神起のユノ?サインくださーいっ」
ふざけて手を突き出すジェジュンに弱く笑い、ユノは読んでいた雑誌から顔を上げる。
ツアーに伴うパンフやグッズの撮影。その合間にテレビやラジオのコメント収録、と相変わらずの1日。
行き交うスタッフ。セットを移動するカメラマン。その隙間を縫うように、マネージャーが駆けて行く。

いつもと変わらない風景。

よ、とジェジュンはユノの隣の椅子を引いて、逆向きに座った。背もたれに肘をつき、
「な、ケンカか?」
「…」
答えないユノに、ジェジュンの笑みが深くなる。形の良い唇が弧を描いた。
「ふーん、やっぱりね。…お前もユチョンもぜーんぜん目、合わせようとしないもんなっ。で、何でケンカしてんの?」
「…いや、別れたんだ」
「…は?」
言葉を切った顔のまま、
ジェジュンが固まった。
しばらく、して。
「嘘」
「お前に嘘ついてどうするんだよ。…ジェジュン、目が落ちるぞ」
真顔で言うユノを睨んだ後、ジェジュンはすぐに表情を改める。
「なぁ、…なんで?ちょっと前まで全然普通だったじゃん」
「…そうだな」

そう言えば、どうして別れるのか理由を聞いてない。…聞いてどうなるものでもない、と、ユチョンの表情が語っていたせいもあるけど。

黙り込むユノを無視して、ジェジュンは一生懸命考えている。
「…確か、先週まではなんでもなかったよな。…そう、アレだよ。あの休み明けから、お前らなんか変だったよ」


…そうだ。


「なぁ、ユノ。聞いたの?ユチョンに、休みの間何かあったか」
ジェジュンの問い掛けに、首を横に振る。目を剥いて何かを言いかける彼に、
「悪い、ジェジュン。もうこの話はやめてくれ」
「おい、ユノ…」
「こんな場所で話せる話じゃないんだ、頼む」
「…」
結局、ジェジュンが折れて会話が終わる。
まだ何か言いたそうな顔のまま立ち上がり、離れて行った。
一人になって、ユノは彼の言葉を思い返す。


(…休み明けから、お前ら変だった)

(…休みの間何かあったか聞いた?)


…降って湧いた、突然の
二日間のオフ。


丁度一週間前に終わった
そのオフの、前と後でユチョンは別人になっていた。


甘えてこない。笑わない。拗ねない。触れてこない。


そして、昨夜。
約束もなくユノの部屋を訪れ、別れてくれと彼は言った。


時間を追う毎に酷くなる胸の痛みを持て余しながら、ユノは軽く目を閉じる。


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