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□INNOCENT
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…忘れろ。

ジェジュンの言葉。

だから、チャンミンはそれに従おうと思った。この5人で過ごすようになって数年、時に衝突することもあったが、ジェジュンの導きや慰めは必ずプラスの方向に働いたから。

忘れなきゃ。

忙しい日々の中、どうしてもユチョンとの距離は遠くなってしまったが、それでもチャンミンは努力した。時間が経つにつれ、少なくとも仕事中はそれほど無理をしなくても以前のように振る舞えるようになる。

だが、それ以外…例えば、くたくたになってベッドに沈んだ後。

(…はぁっ…)

淫らな声。露になった白い胸。何かを堪えるようにしかめられた顔が、無性に…

(…あっ…ん…)

上擦った声で呻き、紅い唇を手で覆うユチョン。乱れた髪が頬に落ち、

…あんな顔。声も、…体も、見たことのないもので。

「…っ」

うっすらと汗をかいて目を覚ます。外はまだ薄暗く、同じ部屋で眠るユノは静かに眠っているようだ。
そのとき、体の異変に気付いてチャンミンはカッと顔を赤くした。畜生、と口汚く呟いた後、そっとベッドを出る。
宿舎の中は静かだった。
安堵しながら着替え、汚れた服や下着を袋に入れて隠す。後でゴミに紛れさせ捨てるつもりだ。
自己嫌悪で吐きそうになる。このこと自体が、ではなくて。

…彼に、欲情した証。

「…っ!」
細かく体を震わせ、チャンミンは浴室に向かう。自分がとても汚く思えて、潰れてしまいそうだった。




ラジオ番組の収録は、慣れたとはいえ気を遣う。今朝の醜態は幸い誰にも気付かれなかったとはいえ、チャンミンの神経は尖ったまま。なのに、こんなときに限って彼と収録をしなければならないなんて。
ユチョンと、もう一人ユノと一緒にスタジオに入る。台本を渡され、打ち合わせが始まった。
「…これ、ユチョンに振るから」
「んー。っつーか、こっちのが答え難くない?」
ボールペンで台本をつつく、ユチョン。
「こういうネタは、まだチャンミンには早いよ」
ふわっ、と笑うユチョンから、反射的に目を逸らす。ユノがくるくるとボールペンを回し、
「でも、別に大した話でもないだろ。…彼女にして欲しいこと、なんてさ」
「えー!?兄ヤバいよ!」ユチョンがユノを上目遣いに見つめ、
「し・て・欲しいこと、だよ?…エロっ」
ぽけっ、とユチョンを見た後、いきなり赤くなったユノが、バカ!と口走って。「そういう話は止めろ!」「なんで〜?」
楽しげなユチョンを睨み、ユノは口を尖らせた。
「この質問はそういう意味じゃないし…大体、チャンミンがいるだろっ」
ずきっ、と鼓動が強く打つ。今朝の醜態が頭を過り、堪らず立ち上がった。
不思議そうなユノに、
「ちょっと気分悪くて…顔洗ってきます」
「え、大丈夫か?」
頷き、歩き出す。
心配そうに見送るユノが、「…風邪かな」
ユチョンは、小さく息をついて台本を捲った。
「さあね。…」
他人事のようなその口調とは裏腹に、その瞳は暗く揺れていた。


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