NOVEL
□きみのとなり
1ページ/1ページ
〜学園パロディー〜
ねぇ聞いてくれる?僕、今とっても楽しい。理由は一つ。学校に行けばユノくんと会えるから。女の子はよく口を揃えて「好きな人が出来たら毎日楽しい」なんて言うけど、昔はそんなことないだろうって思ってた。でも、さ。いざこう自分がそういう立場になってわかる事って増えるんだね。今ならわかるよ、女の子の気持ち。だって僕、ユノくんに会うために学校に行ってるって言っても多分過言じゃない。ユノくんの事を見ているだけで幸せ。話が出来たらもっともっと幸せ。
ユノくんの好きな所?【全部】って言いたい所だけど、それじゃあ上手く伝わらないかな。じゃあ具体的に言ってみたりする。ユノくんの綺麗な体のラインとか、声とか、真っ白な歯を見せて笑う優しい笑顔とか、いつも冷静でクールな性格とか。ああ、やっぱり多すぎる。難しい質問だよそれ。とにかく伝えきれない程ユノくんの好きな所はあるってわけだ。この気持ちに気がついたのは半年前。それよりも前から、ユノくんの事が好きなのかな、なんて思ったことはあったけど、相談相手だったユチョンに、
「そういうのを恋って言うんだよ」
なんて随分上から目線で言われてこの気持ちを自覚した。それから僕の毎日はユノくん一色になった。ふと目が合った時、ユノくんはその目を反らさずに小さく微笑んでくれた。わからない授業の問題に一言アドバイスをくれたり、「ジェジュン」って下の名前で呼んでくれた。自分からユノくんにアプローチしているつもりはないが、やっぱり好きな人だからかな。無意識に目で追ってたりする。そんなこんなでユノくんと目が合う事は割と多くなった。だけどそのおかげで、ユノくんから話かけてくれることも何度かあったし、ほんの少しだけ以前に増して仲良くなれた気がするんだ。これはあくまで僕の自惚れだけどね。だけどたまに考えるよね。ユノくんにとっては、もしかすると「友達」にも満たないただのクラスメートなのかも、とか。何せ僕は一言でいうとパッとしない男だから。お友達と言える友人も指を折って数えられるくらいだしね。
最近はそんな感じ。特に進展もなく僕が一方的にユノくんを好き、みたいな。そんな僕を見てユチョンは「待ってるだけじゃ、何も始まらない」って言ってきた。確かにそうかもしれないって思ったから、僕、頑張ってみようと思う。
ユノくんはいつも一人、屋上で昼食を取っているのを僕は知っていた。寂しくないのか、って思うけど、きっとユノくんにとってはそんなことないんだろうな。一人で居るって言っても、クラスでも部活でも浮いた存在でいる訳ではない。寧ろ男女分け隔てなく接するユノくんはみんなから好かれている人気者だ。きっとユノくんは強いんだ。周りに流されない、自分の世界も大切にする。俺なんて周りに誰かが居ないと何も出来やしない。自分とは正反対のそんな所も、自分がユノくんに感じた大きな魅力だったのだと思う。まぁ、そんなユノくんに今、僕は昼食を誘うつもりで屋上に来てるわけだけど。自分の世界にズカズカ他人に入ってこられるのは嫌なものだと思うから、今更腰が引けてきた。だけどやっぱりユノくんとお昼が食べたいし、もしかしたらユノくんは僕の事受け入れてくれるかもしれない、そんな僅かな可能性を信じてみたかった。
「よっし!」
両手をグッと握りしめて屋上のドアを開けると、そこには綺麗なユノくんの髪が風に揺れていて、その手にはパン一つ。どうやって声をかけるべきだろう。ドキドキする鼓動は止むことなく早いリズムを刻んでいる。
ー頑張れ僕!!
意を決し、ユノくんの元へと歩み寄った。
「ユっ・・、ユノくん・・?」
「ん?」
ユノくんは突然の事に驚いた様子で目を見開いていた。
「あ、あのっ、えっと・・」
「ん?何?」
「あのっ、」
ユノくんは首を傾げて怪訝そうな顔をした。早く言え僕!だってせっかく勇気を出してここまで来たんだ。ユノくんと一緒にお話しながらお昼食べるんだ!!
「・・ごっ、ご飯、一緒に食べて・・いい?」
「えっ?」
言えた。だけど急に恥ずかしくなって僕は俯いた。ユノくんの返事を待つ時間がやけに長く感じる。やはり迷惑だと思われただろうか。だったら早く断わって。ウザいって思うなら突き放して!悪い返答ばかり考える僕にユノくんが発した言葉は意外なものだった。
「隣、どうぞ」
「えっ?」
驚いて顔を上げると、ユノくんは穏やかに笑っていた。
「一緒に飯、食うんだろ?」
「うっ、うん!!ありがとう!」
この瞬間、僅かに期待していた可能性が現実になった。凄く嬉しい。ユノくんに勇気を出して言って良かった。そしてユノくんが笑って僕の事を受け入れてくれた事が、何よりも嬉しかった。
今日はユノくんへの恋に一歩全進した日。いつの日かユノくんに振り向いてもらえる日が来るといいなぁ。
だからお願い。
どうか、
貴方の隣が奪われませんように。
END