イナズマ

□壊したいほど愛してる
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俺が眠っている間に鬼道さんが逃げ出した。
どうやったかは分からないが、部屋を抜け出し、屋敷から逃げ出した。
鍵を外からかけるように言っておいたはずなのに、かかっていなかったようだ。
どこへ逃げたのかは、まあ、大体見当がついている。
たぶん、家だろう。
そう思い、鬼道さんの家を訪ねてみた。
すると、鬼道さんの自宅近くと言うか、自宅の本当に傍で鬼道さんは蹲っていた。
涙を流して震えている。
もしかして、門前払いでもされたのか?
そんな事を考えていると鬼道さんの家から鬼道さんの父親と小さな子供が一緒に出てきた。
新しい息子を手に入れたのか?
もしかして、それを見てしまったから、泣いているのか?
だとしたら、この人は凄く傷つきやすいのだな。
たかが、それぐらいで泣いて、帰る事を止めてしまったのだから。

「鬼道さん、あなたの家は、もう、ここじゃないでしょう?俺と一緒に帰りましょう。」

そう言って、鬼道さんに声をかけた。
顔をあげ、俺を見つめる鬼道さん。
しばらく悩んだ後、鬼道さんは立ち上がった。
そっと、鬼道さんの手を握ってみる。
すると、鬼道さんはぎゅっと俺の手を握り返してきた。

「佐久間、は、いつ、俺を捨てるんだ?俺、あと何回捨てられたら、いいんだ?」

と、聞いてくる鬼道さん。
いつ?
そんなの分かるはずがない。
俺がいつ飽きるかなんて、自分では分からない。
ただ、もし、捨てるにしても、捨てる時は一生生きて行くのには困らないようにしてから捨ててあげよう。
そうすれば、少しは救われるだろうから。
そう思い、俺は鬼道さんに

「その内、飽きたらですね。まあ、捨てる時は生活に困らないようにしてから捨ててあげますよ。」

と、言った。
そう言うと鬼道さんは、また、泣きだした。
なぜ、泣くのだろう?
俺に捨てられれば、もう、身体を捧げるような事しなくて済むのに。

「・・・・・・今すぐ、捨ててくれ。何もしてくれなくていいから、今すぐ、捨ててくれ。」

ああ、捨てられるまでに時間がかかりそうなのが嫌で泣いていたのか。
でも、今は、まだ、捨てるつもりはないですよ。
だって、俺はあなたを気に入っていますからね。
凄く、あなたに執着していますからね。
だから、当分は捨てませんし、逃がしませんよ。

「嫌だ。もう、誰かと一緒になんて、居たくない。捨てられるのに、誰かと一緒にいるのは、嫌だ。」

そう呟いてから鬼道さんは俺の手を振りほどいて走り出した。
俺は急いで後を追った。
急に逃げ出さなくても良いだろうに。
まあ、でも、逃げ出すならこれが最後のチャンスではある。
今回逃げられた事を教訓に俺は、鬼道さんが二度と逃げられないように色々とするだろうから。
でも、逃げるにしても、俺に見つかる前に逃げれば逃げ切れる可能性が0.1%ぐらいは高くなっただろう。なのに、それをしなかった。
それは、大きなミスだと思う。
まあ、逃げようとすること自体が大きなミスと言えばミスだろう。逃げ切れるはずもないのだ。どこへ逃げたって必ず見つけ出すから。
俺が手にしている財力権力人脈全てを使って、絶対に見つけ出しただろうから。

「離せ、離せよ!!」

そう叫びながら俺から逃げ出そうとする鬼道さん。
俺はそんな鬼道さんを抱きしめ続ける。
普通ならここまで拒絶されると捨ててしまうだろう。
でも、俺はこれほどまでに拒絶されても鬼道さんを捨てようとは思えない。
むしろ、余計に束縛しておきたくなる。
この気持ちは一体何なのだろう?
分からない。
なぜ、俺はこの人にこんなにも執着してしまうのだろう?
飽きるまでずっと居れば分かるだろうか?まあ、とにかく離すつもりはないから捕まえておこう。

「諦めてください。どう足掻いてもあなたは俺から逃げ切れないんですから。」

そう告げて、用意しておいた薬をかがせた。
ぐったりとなる鬼道さん。
そんな鬼道さんを連れて屋敷へ戻った。
逃げ出す事が出来ないように身体に教え込もう。逃げればどんな目に遭うのかを。
あなたが俺の物であり続けると誓うまで、苦痛にも似た快楽を与え続けよう。
そうすれば、もう、逃げようなんて考えないだろうから。
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