イナズマ

□言えない
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目が覚めると、隣に佐久間の温もりがあった。
幸せそうに眠っている。
それを見ると、無性にむなしくなった。
まさか、俺が佐久間に犯されるとは・・・・・・。
しかも、佐久間は明らかに勘違いしている。
俺の好きは佐久間の好きと全然違う、友達としての好きなのに、それを自分と同じ意味での好きだと思い込んでいる。
その事を伝えなければいけないと思うと、気分が滅入る。
きっと、違うと言われたら、佐久間は悲しむだろうな。
それを思うと、言うのが嫌になるが、言わなければこいつはずっと勘違いしたままだろう。
なら、伝えてやるのが親切ってものだ。
はぁ、それにしても、男同士で、俺が女役であんな事するとは思わなかったな。
しかも、浅ましいほどに快楽を求めてしまった。
情けなくて、泣きたい気分だ。
でも、思ってたより、抵抗がなかった気がする。
むしろ、あっさりと受け入れてさえいた。
それにも驚きだ。
まあ、でも、佐久間の物凄い勘違いが一番の驚きだけどな。
まったく、佐久間の好きがそう言う意味での好きだったなんて、思わなかっただけに、本当に驚きだ。
あーあー、まあ、一度くらいなら、イイか。忘れてしまえるだろう、一度くらいなら。
そう自分に言い聞かせて、納得して、そして、もう一度眠った。
起きていると、気分が滅入るから。





もう一度眠って、目を覚ますと佐久間が嬉しそうに俺を眺めていた。
言い難いな、本当に。

「鬼道さん。ねぇ、痛くなかったですか?気持ち良かったですか?俺ね、色々勉強したんですけど、どうでした?」

聞くなよな、そんな事。
そう言いたいけど、言えない。
それに、気持ち良かったんだよな、凄く。
でも、正直に言いたくないし・・・・・・。
そう思っていると佐久間が凄く泣きそうな目で俺を見ながら

「俺、もしかして、下手、でした?痛かった、ですか?ねぇ、俺、次はちゃんとやります。上手になります。だから、俺の事、捨てないでくださいよ、鬼道さん。ねぇ、鬼道さんが俺の全て、なんです。鬼道さん無じゃ、生きていけないんです。だから、捨てないでください、鬼道さん。」

と、言って俺に縋りついて来た。
俺は、佐久間の頭を撫でてやりながら

「捨てないから、安心しろ。」

と、言った。
そんな事を言えば、佐久間はますます勘違いをしてしまうと言うのに。
でも、言えるはずない。
こんなにも、必死になっている佐久間に、佐久間を突き放してしまうような事、言えるはずがない。
言ってやらなければ、こいつは勘違いしたままだろう。
それでも、俺には言えないのだ。
佐久間が泣いてしまうような事を、どうしても言えないのだ。

「鬼道さん、俺ね、鬼道さんの事誰よりも愛してます。大好きで、愛しすぎてね、鬼道さん無じゃ生きていけないんです。だから、俺を捨てないでください。ずっと、ずっと、俺と一緒にいてください。鬼道さん。」

そう言って俺を見つめる佐久間。
その言葉に、俺は頷いてやるしか出来ない。
いつか、俺は佐久間を捨てる事になるかも知れない。
それでも、今は、佐久間を抱き締めていたい。
こんなにも必死になっている佐久間を抱きしめてやりたい。

「鬼道さん・・・・・・。鬼道さん、鬼道さん。鬼道さん鬼道さん鬼道さん。」

精神的にプッツンいってるほど思えるほどに佐久間は何度も俺を呼んだ。
そんな佐久間を抱き締めて、俺は何度も何度も佐久間の頭を撫でた。
サラサラの髪の感触が気持ちイイ。
触れ合う肌の温もりも、悪くない。
佐久間が落ち着くまで、佐久間が俺を必要としなくなるまで、佐久間の望む恋人の振りをしてやろう。
そうしないと、佐久間が壊れてしまうような気がするから。






「鬼道さん。気持ちイイですか?」

俺の身体を深く突き上げながら、佐久間は聞いた。
快感で、頭が一瞬真っ白になる。
それでも、その問いに答えなければ、イかせてくれないから、俺は

「イ、イィ、おぉ、佐久間。」

と、声を振るわせ呟いた。

「イイ子ですね。それじゃあ、出させてあげますよ。」

と、言って戒めとなっていた紐を解いてくれた。
塞き止められていた熱が触れ出し、心地よい解放感にうっとりとなってしまう。
あの日から、佐久間のしてくる行為がエスカレートして、今現在、俺は身体の全てを佐久間に束縛されていた。
いや、身体だけじゃない、心も・・・・・・。
あの頃とは違う。
捨てないでくれと縋りつくのは、今や、俺の方だった。
身体に刻み込まれた快楽が、俺を縛り上げ、否応なしに佐久間を求めさせる。
時折、逃げ出さなければと思っても佐久間に縋りつかれるだけで、泣きそうなまなざしで見つめられるだけで、逃げ出せなくなってしまう。
もっとも、もう、そんな表情の佐久間を長い事見ていないが。

「鬼道さん。好き、です。愛してます。もっと、もっと、中に出させてくださいね。」

「ぁア、はぁ、ぁン。いっぱぁい、ちょぉ、だぃ。」

「はい・・・・・・。」

犯され、中に佐久間の熱を吐き出される喜びに身体が震える。
佐久間に嘘でもいいからとにかく愛していると言われると喜びに身体が震える。
逃れる事が出来なくなってしまった自分を情けないと感じる事はあっても、それでも、佐久間を求めずにはいられない。

「鬼道さん・・・・・・。もっと、俺を、好きに、なって。俺から離れられなくなって、俺だけを見て、俺だけを考えて、俺を独占してください。あなたの全てが俺は、欲しいから。」

ああ、俺もお前の全てが欲しい。
その命さえも全て・・・・・・。
いつか、佐久間が俺を捨てる時、俺は、きっと、佐久間の全てを佐久間から奪い去るだろう。
そして、俺の全て佐久間に捧げよう。
誰にも邪魔されず、永遠と愛し合えるように、奪って、捧げよう。
そして、後悔したらいい。
こんな俺を愛した事を。
こんなにも俺を溺れさせたことを。
俺を捨てた時に、後悔したらいい。











俺は卑劣な男だ。
鬼道さんを好きになって、鬼道さんを手に入れる為に、鬼道さんの身体に逃げる事の出来ない鎖を巻き付けた。
快楽と言う名の鎖を。
あなたが溺れた分だけ俺も溺れて行く。
あなたが俺を愛したら、その何億倍も俺はあなたを愛してしまう。
だから、きっと、俺達は永遠に愛し合える。
あなたが俺から逃げ切らない限り、永遠に・・・・・・。





おわり
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