イナズマ

□奴隷であっても・・・
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気がついたら、ベッドの上だった。
身体の中と外、両方が汚れていた。
気持ち悪い。
吐き気がする。
それなのに、うっすらと覚えている快楽の記憶に、佐久間に抱かれたという事実に、喜びを感じていた。
最後の最後までイかせてもらえず、辛かったのに、ようやく与えられた解放感に、いつも以上に心地良さを感じた。
不思議な気分だ。
そう言えば、佐久間はどうしたのだろうか?
気になって、佐久間を探して起き上がってみると、俺の隣で眠っていた。
穏やかな寝息を立てて、気持ち良さそうに眠っている。
触れたい。
でも、触れたりしたら怒られる気がする。
佐久間は、俺が嫌いだから。
だから、触れるのは我慢しよう。
ああ、それにしても、一度だけで良いから、正常位でして欲しかったな。
ずっと、四つん這いのまま抱かれて、佐久間の顔見れなかったから。
どんな顔で佐久間は俺を抱いたんだろうか?
少しは、感じてる表情してくれてたかな?
ちょっとだけで良いから、楽しいとか、思ってほほ笑んでくれたかな?
分からなくて、それを知りたいけど、でも、もう、これっきりになるはずだ。
している時は、セフレにしてくれると言っていたが、正気に戻れば、きっと、もう、そんな事をしようとは思ってくれないだろう。
でも、良い。
それでも、良い。
たった1度でも、好きな相手に抱いて貰えたんだから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
起きた時、俺が隣にいたら、嫌がる、よな?
俺の事嫌いみたいだし、いない方が、良いよな。
とりあえず、身体を洗って、帰ろう。
そして、これからは佐久間に近づかないようにしよう。
そうじゃないと、俺は、佐久間を忘れられないだろうから。





身体の中から零れた精液が、俺の身体にしみこんでくれればいいのに。
佐久間に抱かれた証が身体にずっと、残ればいいのに。
でも、それはかなわない事だから、そして、佐久間を忘れないといけないから、俺は身体を徹底的に洗い流した。
少しも残さないように。
抱かれた印を何一つ残さないようにした。





身体を洗って、部屋に荷物を取りに良くと、佐久間が起きていた。
なんとなく、気まずい。
そう思っていると、佐久間に手招きで呼ばれた。
どうしようか、一瞬悩んだが、とりあえず、佐久間に近づいた。

「明日から、部活の後に部室で抱いてあげます。だから、ちゃんと、自分で慣らす物を持ってきてください。今さら、逃げようとしないでくださいよ。鬼道さんが寝てる間に、こういう写真、撮っておきましたからね。」

そう言って、佐久間は携帯の画面を見せてきた。
写っていたのは、脚を開けて、恥ずかしい部分を丸見えにさせている俺の姿だった。
うっとりとした表情で、精液をこぼしている。
自分のペニスと、アナルから。

「俺が飽きるまで付き合ってもらわないと困りますからね。これで、逃げられませんよ。」

冷たい笑みを浮かべながら佐久間は言った。
逃げれない、か。
それでもいい。
佐久間が飽きるまででも、佐久間に抱いてもらえるというなら、それはそれで、うれしいから。
たった1度では足りなくて、物足りなささと、虚しさしか残っていなかったから。
だから、逃げられず、強制的にも近い行為でもいい。
また、佐久間を感じられるなら、触れることができるなら、それでも、いい。
そう思った。






佐久間と関係を持つようになってから2週間。
俺は、毎日のように佐久間に抱かれた。
ただ、一度も正常位ではしてくれない。
それでも、佐久間がどんな表情をしているのか見たくて、自分から佐久間の上に跨ったりはした。
その時、キスをしようとしたら怒られた。
セフレだから仕方ない事なのだけれど、でも、悲しくて、苦しくて、辛かった。
好きなのに、身体だけしか必要とされていない。
それ以外に価値などなく、冷たい扱いや態度に泣きそうになって、好きと伝える前以上に、日々の生活が辛いものへと変わった。
一度だけで良いから優しくされてみたい。
そう願ったところで、叶うはずもなく、もう、佐久間から逃げ出したいとさえ思い始めた。
せめて、一度だけで良いから、優しくされてみたい。
本当に、たった一度だけで良いから・・・・・・。






心も体もボロボロだった。
それでも、義務的に佐久間との行為を済ませ、家に帰ろうとした。
帰ろうとしたはずなのに、身体が動かない。
辛くて、涙が止まらなくて

「俺は、あなたが大嫌いです。だから、そうやって俺を呼ぶの止めてくれませんか?不愉快で仕方ありません。」

と、言う言葉が何度も何度も頭の中で木霊する。
抱かれている時に、名前を呼んで求める事すら許してはもらえない。
嫌われているのは、ちゃんと分かっているはずなのに、それを口に出して言われると、胸が張り裂けてしまいそうになる。
佐久間、辛い、よ。
もう、嫌だ。
こんな生活、嫌だ。
触れる事は出来なくても、好きだと言えなくても、騙しているのだとしても、それでも、ただの友達だった時の方が、良かった。
こんなにも嫌われてはいなかったから、酷い事など何もされなかったから、だから、あの頃の方が、マシだ。
あの頃に戻りたい。
戻りたいよ、佐久間・・・・・・。






いつも通り部活の後、部室で佐久間に抱かれた。
やり終わると佐久間はすぐに部室を出て行ってしまう。
それが、凄くさびしい。
ちょっとだけで良いから、待っていて欲しい。
途中までで良いから、一緒に帰って欲しい。
でも、そんな事言えば、余計に嫌われてしまうから、言えない。
ただ、いつも通り、佐久間が帰ったあと身支度を整え、部室を後にした。
すると、廊下で源王とすれ違った。

「鬼道、まだ残ってたのか?」

と、聞いて来る源王。
俺はその言葉に頷く。

「そっか。あ、ちょうどいいや。部室のカギ職員室まで取りに行くの面倒だから、ちょっと貸してくれないか?忘れ物しちまったんだ。」

まあ、職員室と部室はやけに遠いし、面倒だろうな。
しかも、合鍵持ってるのって俺ぐらいだし。
正直、早く帰りたいが、まあ、ここで見捨てると気まずそうだから、源王について行く事にした。

「悪いな、鬼道。この埋め合わせはちゃんとする。」

別に気にしなくて良い。
大したことじゃないし。
ああ、それにしても、佐久間も少しで良いからこうやって接してくれないだろうか?
最近は普段の生活の中でさえ、冷たい態度しかとられていない。それが、虚しくて、悲しいから。

「なあ、鬼道。目隠ししたまま俺としてみないか?それで、お前が望んでる佐久間を嘘でも良いから感じてみないか?」

なんて、急に言い出すから思わず源王を見てしまった。
嘘でも良いから、俺の望んでいる佐久間、か。
確かに感じてみたい。
でも、嘘だと虚しいから、今の状態が余計に辛くなるから、感じない方が良いかもしれない。
そう考えて俺は

「止めておく。」

と、答えた。
すると源王は少し残念そうな表情をしたが

「そっか。んー、まあ、でも、辛くなったりとかして、嘘でいいからそう言うの感じたくなったら俺の所に来いよ。物凄く優しくしてやるからさ。」

と、言ってすぐに笑ってくれた。
ああ、なんで俺は、こうも優しい源王ではなく、俺みたいな人種を嫌っている佐久間を好きになってしまったのだろう?
きっと、源王を好きになっていたら、こんな風に辛いとか思わなくて済んだはずなのに・・・・・・。






佐久間と関係を持つようになって1カ月と4日。
心身ともにもう限界で、その日、俺は

「今日は、もう、したくない。」

そう言って、佐久間を拒んだ。
すると、佐久間は不機嫌そうに

「奴隷にも等しいくせに俺を拒むつもりですか?そんな事許しませんよ。」

と、言って、俺の手首を縛りあげ、その場で跪かせた。
立ち上がろうとしたら、頭を押さえつけられ、自分と下着を無理やり降ろされ、強引に潤滑剤を流し込まれ、慣らすことはないまま、ペニスを押し込まれた。
痛くて、怖かった。
まるで、強姦されているみたいで、嫌だった。
泣き叫んでも、名前を呼んでもなにも答えてくれない。
ただ、無言で俺を犯し続けた。
そして、散々俺の中に精液を出したら満足したのかそのまま放りだされた。
手首を縛られたままでは身支度を整えることもできないのに放り出されて、半ば呆然とその場に座り込んでしまった。
出されたものが、気持ち悪い。
凄く、自分が惨めに思えた。






佐久間に犯されて、泣きながら帰っていると、源王が声をかけて来た。

「鬼道?大丈夫か?」

と、言って、心配そうに俺を見つめてくる。
優しい眼差し。
佐久間とは違う。
その眼差しに、源王の優しさに甘えてしまいたくて、俺は源王に抱きついた。
涙が止まらなくて、悲しくて、辛かった。
そんな俺を優しく抱きしめてくれる源王。
温かい温もり。
心地良い。
源王・・・・・・。

「鬼道・・・・・・なあ、俺じゃダメか?俺なら、こんな風にお前を傷つけたりしないぞ。」

と、言ってちょっとだけ強く俺を抱き締めて来る源王。
俺は、聞こえないような小声で

「身体だけなら、源王の方が、良いかもしれないな。」

と、呟いた。
すると、その呟きを聞きとった源王は

「なら、試してみるか?俺と。」

と、聞いて来た。
半ば無意識のうちに俺は頷いて、そして、源王の家に連れて行かれた。






部屋に連れていかれてから

「鬼道、目隠しするか?」

と、聞かれた。
どうしようかしばらく考えてから、俺は

「する。」

と、答えた。
そう答えると源王はアイマスクをしてくれた。
服を脱がされ、ベッドの上に仰向けに寝かされる。

「なあ、キスはやっぱり、ダメ、なんだよな?」

と、聞かれたから俺は

「しても、いい。」

と、答えた。
こんなにも自分勝手に、源王に甘えてしまっている俺に出来る事と言えば、源王がしたいと思っている事を、少しでもさせてあげる事だけだから。

「ごめんな、キスするのが俺で。」

謝らないでくれよ。
そんな風に謝らないでくれよ。
源王のせいじゃないから。むしろ、悪いのは、謝らないといけないのは俺の方だから。
そう言おうとしたけど、でも、その前に源王に唇を重ねられてしまった。
そっと、重ねられるキス。
夢見心地になってしまうような感覚だった。
初めて、誰かにキスされた。
凄く優しいキス。
ああ、こんな風に佐久間にキスをされてみたかった。
こんな優しいキスを一度でいいからして欲しかった。

「嫌じゃないか?続けてもいいか?」

と、聞きながら俺の事を優しく撫でてくれる源王。
本当に優しくて、涙が出てしまいそうになる。
なんで俺は、こんなにも優しい源王を好きになれないのだろうか?

「鬼道・・・・・・さん。」

と、言って俺に触れてくる源王。
俺はそんな源王に

「無理しなくていいんだ。そこまでしてもらえるような価値が俺にはない。」

と、言った。

「お前・・・・・・。鬼道、俺はお前に何もしてやれないんだな。ごめんな。」

そう言ってからは、特に何も言わず、体中を愛撫された。
触れてくる唇も手も、優しくて、心地よかった。
大切に触れられている。
そんな気がして、ちょっとだけ切なかった。
だって、俺は源王にそこまで大切に触れられる価値などないから。
それでも、何も言えなくて、ただ、源王のする事を受け入れ続けた。
凄く時間をかけて中を慣らされ、ゆっくりと身体を繋げた。
ゆっくりと動かれるなんて初めての事で、凄く戸惑ったけど、でも、気持ち良かった。
怖いほど動かれない事がこんなにも、気持ち良くなれるなんて知らなかった。
いつもみたいにペニスを縛り上げられる事もないから、痛みはなくて、凄く楽だった。
しながらイくのは、滅多に出来ない経験だった。
佐久間は終わるまでイかせてくれないから。
佐久間、なあ、俺、一度でいいからこういう風に抱かれてみたかった。
お前に、こんな風にされたかった。
優しくされたかった。
たった1度で良いから、優しくされたかった。
佐久間・・・・・・。
佐久間、俺、もう、無理だ。
こんな風に優しい抱き方もちゃんとあるって身体で知ってしまったから、もう、俺はあんな風にされるのに耐えられない。
耐えられないよ、佐久間。
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