イナズマ

□永遠の償い
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また、毎日佐久間と身体を重ねるようになった。
佐久間の望む事は何でもして、少しでいいから笑ってもらおうとした。
でも、笑ってくれなくて、正直、疲れてしまった。
もう、俺の前では笑ってくれないんだろうな。どんなに頑張ったって、笑ってくれないんだ・・・・・・。
佐久間、佐久間、佐久間、佐久間佐久間佐久間佐久間佐久間佐久間。なぁ、少しでいいから笑ってくれよ。
酷い事してもいいから、俺の前で笑ってくれよ。
俺は、佐久間の笑顔が好きなんだ。
笑ってくれている佐久間が好きなんだ。
だから、笑ってくれよ。
お前のためにどんな償いでも俺はするから・・・・・・。






もうじき、鬼道さんの誕生日だ。
誰からも愛されている鬼道さんの誕生日。決して2人だけでお祝いして過ごす事の出来ない日。
鬼道さんを一人占めしたい俺にとっては嬉しくない日だ。鬼道さんと1度でいいから二人だけで鬼道さんの誕生日をお祝いして過ごしたい。でも、そんな願い、叶うはずない、か。
だから、今まで通り、他の奴らに混ざってお祝いしよう。
愛しい鬼道さんの誕生日を。






もうじき誕生日。
色んな奴に欲しいものを聞かれたりする。でも、全て適当に答えておいた。
だって、俺の欲しい物は誰もプレゼントすることなどできないのだ。
だから、別に何も欲しくない。
ただ欲しいのは佐久間の笑顔だけ。佐久間が昔みたいに笑ってくれるそれだけなのだ。
でも、それは手に入らない。
どう足掻いたって手に入らないのだ・・・・・・。






誕生日の前の日、佐久間が

「鬼道さん、誕生日に欲しいものってありますか?」

と、聞いて来た。
俺は四つん這いのまま、イかせてもらえない苦しさに泣きじゃくりながら

「佐久間・・・・・・あぁ、ぅぅ、明日、ぃ、ち、にぃ、ち。佐久間、欲しい。うぁ、ぅっく。あぁ、佐久間、欲しい・・・・・・。」

と、言った。
すると佐久間は

「イイですよ。じゃあ、明日1日俺の全ては鬼道さんの物です。好きにしていいですからね。」

と、言った。
笑顔が手に入らなくても、佐久間が1日手に入るなら悪くないかもしれない。
無理にでもいいから1日、昔みたいな関係のふりをしていてもらおう。
そして、二人だけで過ごそう。
誰にも邪魔される事無く、二人だけで。
楽しかった頃のように。






誕生日当日。
佐久間と二人で出掛けた。
妙にそわそわしている佐久間。そんな佐久間の手を引いたりしてみる。
そうしないと、どこかに行ってしまいそうで、置いて行かれそうで怖いから。

「鬼道さん。楽しいですか?」

と、聞いて来る佐久間。
楽しい・・・・・・?
楽しくない。佐久間と一緒に居ても、こうして二人で過ごしても、楽しくない。
佐久間が笑ってくれないから、今までのように接してくれないから、楽しくなんかない。
どうしたら、佐久間と楽しく過ごせるのだろう?少しで良いから佐久間と楽しく過ごしたい。
ただそれだけが望みなのに、なんで、楽しく過ごせないんだ?
やっぱり、もう、戻れないんだろうか?
楽しかった頃には。
佐久間と二人で過ごしている事が楽しくて仕方なかったあの頃には・・・・・・。





夕食は父さんが開いてくれた誕生会らしきパーティーで食べた。
もっとも、あまり楽しくない1日を過ごしたせいで食事が凄く味気ないと感じてしまったが。
食べ終えた後は、用意されていた部屋に戻った。
わざわざホテルで誕生会なんてしなくていいのに。そんな事を思いながら部屋に戻ると佐久間が一緒にエレベーターに乗り込んできた。
何か用だろうか?
もう、今日は1人で静かに眠りたい。
こんなにも悲しくて、虚しい誕生日は初めてだな。
そんな事を思っていると佐久間が

「鬼道さん。置いて行かないでくださいよ。今日一日、俺は鬼道さんの物なんですよ。」

と、言った。
俺の物か。
そう言われてもちっとも嬉しくなどない。
ただ、虚しいだけだった。
嫌われているのに、憎まれているのに、無理にでも俺といようとしてくれる事が、虚しくて悲しくて仕方なかった。
だから、もういいから帰れ。そう言おうと思った。
思ったのに、バカげたことを考えてしまって、言えなくなった。
代わりに俺は

「今夜は、今夜だけで良い。佐久間、俺を、俺を恋人として、抱いて、くれ。」

と。
馬鹿げている事は分かっている。
くだらなくて、愚かなのも分かっている。
それでも、なぜかそう言う風に抱かれてみたかった。
きっと、俺はこの先、佐久間への償いが終わるまで佐久間以外と身体を重ねる事はないだろう。
だから、今夜だけで良い、たった一度でいい。嘘でも何でもいいから、愛されて抱かれたい。そう思ったのだ。

「鬼道さん?・・・・・・良いですよ、今夜は恋人のように優しく抱いてあげます。」

そう言って、俺をぎゅっと抱きしめる佐久間。
ああ、そうか。
俺は佐久間が友達としてではなく、ただ一人の相手として好きだと思っていたのか。
ずっとこの温もりを一人占めしたかったんだ。
ずっと、佐久間には俺しかいない事が本当は嬉しくて仕方なかったんだ。
嬉しくて、嬉しくて仕方なかったんだ。
今さら、気づいても、遅いだろうな。
きっと、もう、佐久間のい抱いた俺への憎しみは消せないものになっているだろうから。だから、もう、憎まれたまま、それでも、償いの為と言いながら傍にいる事しか俺には出来ないのだ。
償いと言う鎖で縛られていたのは、きっと、俺ではなく、佐久間なんだろうな。
ごめんな、佐久間・・・・・・。
ごめん、な。お前には俺しかいない。そう思わせてしまうほど、お前を独りぼっちにさせて、本当に、ごめんな。
でも、償えないんだ。その罪を俺は償えない。だって、償う為には、それを伝えないといけないだろ?
そんな事してお前が俺を置いて行ってしまう事が嫌だから、だから、俺は繋ぎ止めるよ。憎しみと償いの鎖で、俺の傍にお前を繋ぎ止める。
その鎖にお前が気づき、逃げ出そうとしても、それでも、ずっと、繋ぎ続けるよ。
佐久間が好きだから。






「鬼道さん。気持ちイイですか?」

と、言って佐久間は俺の身体を撫でた。
俺は佐久間のその言葉に頷いた。
優しく身体を撫でまわされて、時折感じやすい場所をペロッと舐められる。
その度に身体が震えてしまう。
いつもよりも優しくて気持ち良くて、身体を繋げていないのに声が出てしまう。
これが、恋人同士のセックス、なんだな。いつものとは全然違う。
ああ、そう言えば、初めての時も少しだけ、こうやってされたな。
あの頃は、もしかしたら、そんなに憎まれていなかったのかもしれないな。

「鬼道さん、全部俺の物ですよ。ここも、ここも、全部、俺だけの物です。」

恥ずかしくなるような場所に口付け、吸い上げ、痕をつけていく佐久間。
全部、佐久間の物・・・・・・。俺の全てが佐久間だけの物・・・・・・。
あぁぁ、なんて、いい響きなのだろう。
けれど、それだけでは足りない。
佐久間の全てを俺だけの物に出来たらどれほど素晴らしいだろう?
どんな形でもいいから束縛出来たらどれだけ幸せだろう?
佐久間・・・・・・。何もかもが、欲しい。佐久間の全てが欲しい。
償いをしなくていいのなら、きっと、俺はお前の全てを奪うような事をしただろう。それだけ、俺はお前が好きで仕方ないから。

「鬼道さん。ここ、トロトロにしましょうね。痛くないように、気持ち良くなれるようにしましょう。」

そう言って俺のアナルを舐め始める佐久間。
指を挿れないで、そんな風に舐められるのは初めてで、気持ち良くて嬉しかった。
そんな場所をそんな風に佐久間に愛でられて嬉しかった。

「佐久間・・・・・・気持ちィィ。あぁ、佐久、ま。」

「ん、可愛い声、ですね。もっと、出してください。」

そう言って佐久間は舐めるのを止め、指を挿し込んできた。
指をゆっくりと抜き差ししながら、俺の太股にキスをしたり、舐めたりしてくる佐久間。
くすぐったくて、気持ち良くて、声が零れる。佐久間を求めずにはいられなくなって行く。
毎日、こんな風にされたらどれほど幸せか。
そんなの、夢のまた夢だろうが。

「凄い、トロトロになってきましたね。そろそろ、挿れますか?」

と、聞かれ、俺はもう少しこうしていたいような気もしたが、指だけでは物足りなかったから

「挿れ、てくれ。」

と、答えた。
大きく足を開かされ、ゆっくりと佐久間のペニスを挿し込まれた。
いつもみたいに一気に挿れないんだな。
力が入ってしまうから、挿れにくいはずなのに、それでもゆっくりと身体を繋げようとしてくれる。

「力、抜いてくださいね。」

そう言って、キスをしては俺を安心させてくれる。
そんな風にされたのは初めてで、戸惑うけれど、でも、凄く気持ち良かった。
身体を繋げる事がいつもより何十倍も気持ち良かった。
初めての時もこんな風だったら良かったのにな。そうしたら、もっと、早くに気づけたかもしれない。
俺は佐久間が好きなんだって。

「気持ちイイですか?怖くないですか?」

と、聞きながら優しく頬を撫でてくれる佐久間。
その動きにさえ俺は感じてしまう。
今、ちょっと触れられるだけで、それだけで、感じてしまう。
それだけ身体が敏感になってしまっていた。
凄く気持ちイイから、それを伝えたくて

「佐久・・・・・・んんぅ。」

言おうとしたのに、急にキスをされた。

「ん、ぅ、ふぅ。有人。有人、有人。有人。愛しています、有人。」

名前を呼ばれ、愛していると言われた。
その愛しているが嘘でも嬉しいから俺は、ギュッと佐久間にしがみ付いて

「次郎、愛してる。」

そう言った。
初めて佐久間の事を名前で呼んだ。
初めて、こんな風に気持ちをちゃんと口に出して言えた。
ああ、佐久間。
愛してる。愛してる。
だから、今夜だけ嘘で良いから俺を愛していると言って。
愛しているふりをして。
佐久間、今夜だけは、俺の物で、恋人として抱いてくれるんだろ?
だから、もっと、嘘で良いから言って。
愛しているって。






心地よい夢のような時間を過ごせた。
佐久間に抱かれ、幸せだと思えた。
それでも、それは永遠にはならないだろう。
いつか、佐久間は俺以外を見るから。
だから、今夜だけは幸せなままでいたい。この温もりに包まれて、満たされたままでいたい。
俺の全てである佐久間を1人占めしていたい。今夜だけでいいから。






鬼道さんが俺を求めてくれた?
こんな俺を・・・・・・。
嬉しくて、嬉しくて、死んでしまいそうだった。
だって、俺は鬼道さんに酷い事をたくさんした。そんな俺を鬼道さんは求めてくれた。
それ以上に嬉しいことなどあるはずが無い。
そして、俺を求めてくれたということは、鬼道さんは俺を好きでいてくれているのだ。
醜い、こんな俺を・・・・・・。
だから、明日伝えよう。
鬼道さんに言おう。
鬼道さんが好きだって、愛していますって。
そして、戻ろう。
楽しくて幸せだったあの頃へ。
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