イナズマ

□悪魔に恋をした
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光を取り戻して最初に見たものは、俺に光をくれた男の顔だった。
眼帯をした銀髪の美しい男。
俺がチームKにいた時、オルフェウスのメンバーとして対決した、日本代表の一人佐久間 次郎。
なぜ、俺に光を与えてくれたのか?
それが分からなかった。
同情からだろうか?
佐久間も俺と同じように力を追い求め、大きな代償を払ったらしい。だから、同情して、助けたのだろうか?
そんな事を思っていると

「本当によく似ていますね。髪を降ろしているとそっくりですよ。」

そう言って笑った。
その言葉でなんとなく悟ってしまう。
俺を助けたのは、俺が鬼道有人に似ているから。ただ、それだけなのだ。

「手術で瞳の色も鬼道さんと同じになったからよけいに似ていますね。」

瞳の色が同じになった?
もしかして、わざとそうしたのだろうか?
まさか、な。
そんなはずはないよな。
そう言い聞かせてみるが、なぜか、不安になる。
なぜ、なのだろう?

「そうそう、あと3日ほどで退院出来るそうですよ。退院したら俺と日本に来てもらいます。」

日本に?
帰れない、のか?俺は皆の所へは帰れないのか?
皆とやり直すと決めたのに・・・・・・。
抗議しようにもその権利は俺にはない。
何故なら、この目を治すことと引き換えに佐久間に全てを捧げると約束したのだから。
約束を破る事は出来ない。

「心配しなくても、全て俺が準備しておきます。あなたは何もしなくていい。ただ、俺の傍にいて、時間の許す限りサッカーをすれば良いだけなんです。」

その言葉はなぜか囁くようで、それは悪魔の囁きにさえ聞こえてしまう。
なぜ、そう聞こえるのだろう?
理解する事が出来なかった。

「あなたが俺を裏切らない限り、あなたの仲間達が十分サッカーの練習が出来る環境を与えてあげますよ。・・・・・・裏切っちゃダメですよ?」

そう言い残して、佐久間は部屋から出て行った。
裏切らない限り?
なぜ、裏切ると思ったのか分からない。
約束は守るつもりだし、何より、これから俺は支えてくれようとした仲間を裏切らなくてはいけないのだ。
この目の代償に。
そんな俺に行くあてなどありはしない。
佐久間の傍以外に行くあてなど存在しないのだ。
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