イナズマ

□愛の快楽をあなたに
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鬼道視点

両親が死んで、施設に引き取られた。そんな俺の家族は春奈一人だけ。
でも、今日から、新しい家族ができて、俺の名前は鬼道有人になる。
ただ、春奈とは別々の場所に引き取られる。
それだけが、俺にとっては、両親が死んだこと以上の不幸だ。
たった1人の妹と、暮らせない。
春奈は、大丈夫だろうか?独りぼっちになってしまうけど、大丈夫なのだろうか?
他の子供たちに虐められたりしないだろうか?酷い大人に引き取られたりしないだろうか?
それだけ、心配で、心配で仕方なかったが、新しく俺の父親になった人は、俺が鬼道家の人間として、しっかりすれば、将来的には妹を引き取ってくれると約束してくれた。
あと、子供を欲しがっている家族の中から、春奈ができる限り恵まれた環境で、幸せでいられる家族をきちんと探して、そこに引き取ってもらえるように手配してくれた。
だから、俺はもう一度春奈と暮らせるようになるまで、春奈に会わないし連絡もとらない。
父さんの期待に応えれるまで、春奈と暮らせるようになるまで、強くありたいから。
常にトップでありつづけないといけないから。






第三者視点

総帥に連れられて、佐久間は鬼道邸にやって来た。
自分の家であった佐久間邸とは差のある小さな家に佐久間は唖然としながらも、玄関から中に入る。
今日から、ここで暮らすことになる佐久間。
なぜ、佐久間がここで暮らすのかといえば、それには訳があった。
佐久間次郎は超巨大企業佐久間グループ社長の息子の1人。
しかし、佐久間が父親の後を継ぐことは決してない。それは、佐久間には2人の兄がいることが原因だった。
佐久間は社長の隠し子で、同じ母親を持つ兄と、母親の違う兄がいる。
一応、認知はされていたが、母親は父親からの援助を拒絶し、女で一つで二人の息子を育てていた。
しかし、その母親が1年前に死に、父親に引き取られたのだが、佐久間は実の兄と違って継母にあたる、本妻と仲が悪かった。
そんな、あまりの仲の悪さを見かねた父親は何かと付き合いのある影山に相談したところ、教育家係り兼友人兼将来的に支えになれる年頃の近い子供を捜している家があると言って、そこで試しに暮らさせてみたらどうだろうといった。
それは、それで不安があったが、家で無表情に、時折怒りをむき出したまま、仲の悪い母親と暮らさせるよりはと思い承諾した。
そういった訳で佐久間は今日から鬼道邸で暮らすのだった。
しかし、大体の事情を察している佐久間は、二度と佐久間家に戻ることはないし、兄たちみたいに父親の跡を継ぐことはありえない。そう思った。
また、それと同時に捨てられたという思いもあった。
まあ、もともとは愛人の子供だし、仕方ないよな。そう思いながらもやはり、捨てられたことはショックだった。
だから、いつか、今日から自分と生活をする鬼道有人を使い、足元をすくってやる。
そう決意を固め、佐久間は鬼道と対面した。






佐久間視点

どんな奴だろうと、取り入ってやる。
そして、絶対に、あの嫌な女に仕返ししてやるんだ。
そう思ってたのに、一瞬でそんなことどうでもいいって、そんなくだらないことなんてするよりも、別の事をしよう。
そう思ってしまった。
それぐらい、鬼道さんは魅力的だった。
同じ男なのに、魅力的で、すごく、欲しいって、触れたいって、思ってしまった。
たった、7歳で、男に欲情する俺は、変、なのだろうか?
いや、でも、そんなのどうでもいい。
欲しい。
鬼道さんって言う、目の前にいる、同い年の、この人が。

「鬼道有人だ。今日からよろしく。」

そういいながら差し出される手を握り、初めて、鬼道さんの体温を感じる。
暖かい手。
離すのが勿体無い。でも、変に思われたくないから、適当なころあいで離した。
もっと、触っていたいな。

「鬼道。佐久間はお前と同じく才能ある選手だ。サッカーでも、いいパートナーになるだろう。仲良くしなさい。」

と、言う影っち。
なんとなく、影っちとは仲がいい。
変に波長というか、好みが合うのだ。あと、あの女と違って人の話もちゃんと聞く。
無駄にべらべらといらないことを話さない。そういうところ、結構好きだ。
ま、冷徹で嫌な奴って言う人もいるけど、俺としては、割と好きな相手だ。
そんな影っちの言葉に

「はい。仲良くなれるように頑張ります。」

と、答える鬼道さん。
仲良く、してもらえる?
それとも、言葉だけ?
どっちだろう?
でも、どっちでもいい。俺は、自分から近づくから。仲良くなれるように、手に入れるために、精一杯頑張るだけだから。






鬼道視点

総帥が連れて来た同い年の少年。
凄く、綺麗な顔をしていて、人形みたいだった。
でも、握ってくれた手は、凄く、温かで、手を離されたのが残念だった。
もうちょっと、繋いでいたかったかもしれない。
そんな、俺の友達で、教育係のような少年の名前は佐久間次郎らしい。
とりあえず、俺は、佐久間と呼ぶことにした。
そして、佐久間を置いて帰った総帥。俺は、名前しか知らない少年の二人っきりになってしまった。
何を、話せばいいのか分からなくて、困ってしまう。
というか、どう接したらいいのだろうか?
分からない。
ただ、戸惑うしかなくて、困りながら佐久間を見た。
すると、佐久間は

「あの、良かったら、家の中を案内してもらえませんか?俺もここで生活するから、部屋割とか、覚えないといけませんし。」

と、言った。
そうか、俺、今日から佐久間と一緒に暮らすんだよな。
まだ、知らないこと多いし、でも、悪い奴じゃない気がする。
それに、なんだか、優しそうで、仲良くなれそうな雰囲気がある。
早く、仲良くなりたいな。
そう思って俺は、家の中を案内し始める。
まずは、1階を案内して、次に2階を案内する。あと、佐久間が見たいと言ったら、庭も案内しよう。
小さいけど、サッカーのゴールとかがあるし、サッカー出来ると言っていたから、ちょっとしたゲームをしたいな。
そんな事を考えながら俺は、家の中を案内して回った。
その間、出来る限り話しかけようとしたのだが、簡単な説明だけしか出来なかった。
初対面の相手と話すのは難しい。
こんな調子で俺は、佐久間と仲良くなれるのだろうか?
不安になってきた。
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