帝人受け


□唯一無二
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俺も所詮人の子だった
何て今更かな



「あーあ…、やっちゃった」



何時かはやると思っていたし、俺だって人間だから完璧じゃない

勿論、その覚悟もしたうえで此方に足を踏み入れたのだが



「…俺も最近、浮かれてたからな」



何時もより少し危険な仕事後で疲れてたのもあるし、何より今日は大事な日だったのだ

常に常備している護身用のナイフは、名前を口にするのも嫌気がする平和島静雄に壊されてしまっていた

ナイフが壊されるのはそう少なくないが毎回やってる程多いわけでもないのに
偶々、今日に限って壊された

やっぱりそれも仕事の疲れからきていたと思う

そして今日は大事な、帝人君との出掛ける約束があった



「ああ、どうしよう
今日は帝人君の所、行けそうにないな…」



俺が想いをよせている竜ヶ峰帝人君との初めて一緒に出掛ける日

それが一番の油断の原因だった


――本当にどうしようかな…
まさか銃で撃たれるなんて、俺らしくない


それに、撃った奴も結構腕がいいらしく、急所を狙ってきた

咄嗟の判断で急所だけは避けたがあまり良くない状況だ

出血量が多すぎる
このままだと出血多量で命にかかわるかもしれない

でも俺は腕を動かすのが精一杯で、もう起き上がることも出来そうにない

撃たれたのは路地裏だから運よく人が通ることもないだろう


――携帯ぐらいなら持てるかな…


何とか動かせた右手で携帯を取り出し画面を開いた

そのまま誰かに助けを求めてもよかったのだが、電話帳に載っている一つの名前で指が止まった

そして、その名前の人物、帝人君に電話をかけた



『…もしもし、臨也さん?』

「あ、帝人君?
俺だけど、ほら今日出掛ける約束してたじゃん」

『はい』

「それ行けなくなっちゃった、から」

『えっ……、なにかあったんですか?』



俺から予定をキャンセルされるとは思っていなかったのか、帝人君は驚いた声を出した
そして何かあったと悟ったらしい

出来れば事情を説明して帝人君に助けてもらいたかったが、残念なことに、どうやら俺の体力が限界らしい
呼吸が苦しくなってきて、意識も朦朧としてきた



「んー…、ちょっと、色々と…ね」

『あ、あの臨也さん?
本当に何かあったんですか?』



段々と自分の言葉が途切れ途切れになっていくのが分かる
息遣いも荒くなってきた
 
流石の帝人君も俺の異変に気付きだしたみたいで、心配そうな声色で尋ねてきた



「帝人君…、俺さぁ、帝人君のこと……好きだったんだ」

『え、あの臨也さん?』

「本当に、…本当に帝人君のこと、好き…だったんだ、」



そこまで言って咳き込んでしまった

もう言葉をはっするのも辛い



『っ臨也さん!
今何処にいるんですか!?』

「だから…、帝人君の、返事……っ、聞きた、い…」



そこで俺は右耳にあてていた携帯を落として意識を失った


――ああ、俺死ぬんだな






 

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