帝人受け


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「――…っ」



目が覚めると見慣れない天井が視界に入ってきた



「目が覚めた?」



次に聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった



「気分はどうかな、帝人君」

「あ…はい、大丈夫です
ありがとうございました、新羅さん」



臨也さんが倒れてる現場を発見してセルティさんに連絡したまではよかったが
セルティさんが着くなり僕は倒れてしまった

それほどまでに臨也さんが心配だったのだ



「もう大丈夫だと思うけど、あんまり無理しちゃ駄目だよ?」

「はい…分かりました
…あの、臨也さんは?」

「ああ、臨也なら隣の部屋にいるよ」



見ておいで
と新羅さんに言われ見に行くことにした

言われなくても行ってたと思うが



「…………」



隣の部屋のドアを開けてみると床に敷かれた布団に眠っている臨也さんがいた



「いやぁ、帝人君がセルティを呼んでくれて助かったよ
多分、普通の医者なら助けられなかったんじゃないかな
それほど危険だったからね」



そう言って新羅さんは部屋から出ていった

気遣ってくれているのだと思う

別に僕等は恋人でも何でもないのだけど何か察してくれたのだろう
 


「臨也、さん……」



臨也さんの身体には外傷が殆ど見当たらなかった

多分、腹部の撃たれた箇所に包帯がある程度だと思う


静かに臨也さんの元へ歩み寄って、臨也さんの顔を覗き込むように座った

やはり眉目秀麗等と言われるだけはある
綺麗な顔立ちをしていた

長くて綺麗な睫毛、形の整った眉、どれも素敵だ



「っ………」



臨也さんの頬に雫が落ちた

一瞬何が落ちたのか分からなかったが、確認するまでもなく僕の涙だと理解した

刹那、



「帝人君、」



僕の名前を呼ぶ声が聞こえた

この部屋には僕と臨也さんしかいなくて、新羅さんはさっき出ていったから必然的に呼んだ人物は絞られてくる

目線を、臨也さんの目へと向けた



「…臨也、さん…?」

「…帝人君、どうし、」



多分、どうして とでも言いたかったのだろう

その言葉は、僕が目から涙を溢れたさせた為、驚いたのだろう臨也さんは最後まで言わなかった

僕は、目から溢れる涙を止められずにいた

臨也さんの目が覚めた
臨也さんはちゃんと生きてくれた

その事実だけで僕は嬉しすぎた



「……っ臨也さん、臨也さん…よかっ、た…」
 
「帝人君…、俺何で…撃たれたんじゃ」

「…僕が、臨也さんの所…行って、…セルティ、さんに……っ」



僕の言葉は嗚咽混じりで全然伝えたい事は言えてなかったと思うが、臨也さんは大まかな事は理解したようだ



「そっか…」



それだけ言って僕の目から溢れる涙を拭ってくれた
その表情は今までに見た事がない、凄く優しい笑い方で


だから、僕は思わず言ってしまった



「臨也、さん…っ」

「うん」

「…っ僕、臨也さんが……好き、です」



言ってしまってから後悔した

臨也さんがあまりにも優しく笑ってくれたから、ほんの少しだけ期待してしまったのだ

この気持ちは絶対に言わないと決めていたのに
自分の心の中だけで止めておこうと思ってたのに

だって、きっと言ったら軽蔑される
そう思ったから



「帝人君…」



臨也さんは非常に驚いた顔をしていた

それはそうか、と心の中で自嘲気味に笑った



「帝人君っ…!」

「…え、」



僕も、驚く羽目になった

臨也さんが僕の名前を呼んだかと思うと、いきなり僕に抱きついてきたのだから

傷は大丈夫なのかと心配する前に驚きの感情が現れた

軽蔑とか、拒絶される事しか考えてなかったからだ
 


「え、い、臨也さん!?」

「帝人君…、俺も」

「え?」

「俺もだよ…、帝人君」



人当たりのよさそうな、でも何時もと違って、つくっていない笑顔で綺麗に微笑んでいた

その笑顔を見たら、また僕の目から涙が溢れていたみたいだ



「え、みか、帝人君!?」

「っ違うんです…、嬉しいんです」



涙腺が壊れたように泣きながらも、臨也さんに伝えたい事を思い出した



「臨也さん」

「? 何かな?」

「…生きててくれて、ありがとう、ございます」





唯一無二
(やっと貴方の存在の大切さに気付けました)





 

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