帝人受け


□嘘つきとひねくれ者
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「帝人君って俺のこと好きだよねぇ」



真顔でとんでもないことをしれっと言う

そんな彼の言動に慣れたように言葉を返す



「頭沸いたんですか」

「酷いなぁ
あー、俺今凄く傷ついた」



やる気なく返ってきた言葉の後には、必ず聞き飽きた台詞を吐く



「ねぇ、どうしたら帝人君を愛せると思う?」

「……どうして僕を愛する必要があるんですか」

「それは、ほら
帝人君が俺のことを好きだから、ちゃんと俺も愛してあげないとなぁって思って」

「頭いかれましたか?」



冷たく、適当にあしらう

そんな僕の態度にはお構い無しに、勝手に言葉をつらつらと並べていく



「俺ばっかり愛されてたら何か申し訳ないしね」

「僕の言葉は無視ですか」

「帝人君の照れ隠しはちゃんと聞いててたよ」



最近、頭のおかしさに磨きがかかってる気がするから、本当に臨也さんの頭の方が心配になる



「何処に照れる部分があったのかさっぱりですけど」

「帝人君は嘘つきだね」



ニコニコと僕の家にやって来た時と同様の笑顔を崩さないまま、臨也さんは喋る

だからこそ、臨也さんの真意が掴めない

この人は何をしに僕の目の前に現れたんだろう
 
まあ、これといった理由何てないんだろうけど



「……臨也さんに言われたくないです」

「俺は嘘ついたことなんかないよ」

「それがもう嘘ですね」



同じような会話を前にもした気がする

何がそんなに面白いのか、臨也さんは終始笑顔を崩さない



「そういえばさ、帝人君この前夜に1人で歩いてたけど、何か用事でもあったの?
正臣君と待ち合わせて本屋にでも行ってた?」

「…………」



分かってるなら、一々聞かないでほしい

というか、何で新宿主体の人がそんなこと知ってるんだろうか



「ねぇ、帝人君は束縛も愛に入ると思う?」

「……話をコロコロ変えないで下さい」



さっきの話すらまだ処理しきれてないのに、また訳の分からないことを言い出した



「束縛したいって思うのは愛かな?」



再度、僕の言葉を無視して同じ質問を投げ掛けてくる

そんなに答えてほしい質問なのだろうか



「……まあ、程度にもよると思いますけど
愛に入るんじゃないですか」



当たり障りのない答えを言う


第一、どんなのが愛何て人其々だと思うから、僕に聞くのは無意味だと思う

思うだけで言葉にはしないけど


 
「じゃあさ、帝人君
なるべく正臣君とかと遊んだりする時は、俺に報告してね」

「……何故ですか」

「それと、俺以外の人にあんまり愛想振り撒かないでね」

「……理由を聞いてるんですけど」



今日は一段と飛び抜けている臨也さんの頭のおかしい発言に、頭痛がしてくる

この人が何を考えて喋っているのか理解出来ない



「だって、帝人君は束縛も、ある程度は愛に入ると思うんでしょ?
だから、ほら帝人君のことを愛すにはどうしたらいいか考えた結果」



……まだ僕を愛すとか考えてたのか、とかよりも呆れの方が僕の気持ちの大半を占めた


ていうか、やっぱり、



「嘘つきは臨也さんの方じゃないですか」

「俺は嘘ついたこと何かないって、」

「いい加減、自分の気持ちとちゃんと向き合ったらどうですか」



――きっと、彼は分かっていて知らないふりをしている


さっき、報告しろとか、愛想振り撒くなとか言った臨也さんの目は本気だった


臨也さんは、自分で気付かないふりをしながら僕に言葉を投げつけている

『ねぇ、どうしたら帝人君を愛せると思う?』

何て、白々しい台詞を前置きに



「……、そう言うなら帝人君も嘘つき何じゃないの?」
 
「僕は……、貴方への気持ちを1回も否定してませんけど」



ここまでくると、お互いにどっちもどっちだと思う



「それは、愛の告白として受け取っていいのかな」

「お好きな解釈でどうぞ」



…否定も肯定もしない自分は、だいぶひねくれてると思うけど


――つまりは、嘘つきもひねくれ者も紙一重








嘘つきひねくれ者



 

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