帝人受け


□ある日のランチタイム
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臨也さんは鈍感だと思う

前々から人の事に関しては何でも知ってる顔をしてる、
というか知ってるのに自分の事となると点で分かっていなかったりしたから自分の事は疎いのかと思っていたが

ここまでくると重症じゃないか









「臨也さん」



場所は僕の家から遠くない何処にでもあるような喫茶店

僕と臨也さんは向かいあって座っていた


臨也さんがちょっと出掛けようと言うものだから、臨也さんの奢りという事で承諾した

今日は休日で時間は昼近かったからお昼ご飯を食べようという事になった



「何かな、帝人君」



相変わらず人のよさそうな、何処か張り付けたような笑顔をしてくる

よくそんな微妙な表情が出来るものだと関心してしまう



「毎日一緒に出掛けたり、一緒に寝たり、相手の家に泊まったり、手を繋いで歩いたり、キスしたりする関係は一般的に何て言うと思いますか」

「恋人って言うんじゃないかな」



僕達それ全部してますよね、とは言わなかった

キスはこの間臨也さんが
『何か帝人君見るとキスしたくなる』
と、訳の分からない事を言いながらされた
 
キスした後の臨也さんは微妙な顔をしていた
眉間にしわを少し寄せて、何かを考えていたようだった

手は
『はぐれちゃうと困るから』
とか、
『帝人君を見てると手を繋がないといけない気がする』
と、また訳の分からない事を言われながら繋がされた

最初は臨也さんの計算かと思った

けど どうやら素らしい

只本当に、気がすると言う理由でキスとか手を繋いだりしたらしい


気がする、とかそうゆう理由でキスしたり手を繋いだりするなんて
誰にでもそうゆう事をしてるんじゃないかと不安になってしまう

というかもう実際にやってるんじゃないかと思う

臨也さん見た目は眉目秀麗だし、情報屋という職業柄、
女性と如何わしい事をしていてもおかしくない


ああ、そんな事考えるだけで吐き気がする

…僕も相当頭がおかしいみたいだ
まさかこの臨也さんの事が―――



「帝人君?」

「うっわあぁ、ななな何ですか!?」

「え…いや、ほら 食べないのかなって」



僕が急に叫んだ為、臨也さんにしては珍しい驚いた顔をした

この人こんな顔も出来るんだなぁと、少し失礼な事を考えながら
臨也さんに言われて初めて箸が止まっていたのに気付いた

でも、僕が叫んだのは無理ないと思う

だって僕が臨也さんの事を……
とか考えてる時にいきなり顔を近づけてきて尋ねてくるんだから



「あ…いや、すいません」

「別にいいんだけど、お腹すいてないのかなって」

「…え、いえ そんな事ないです!」

「そう、ならいいけど」



そう言って臨也さんは微笑をうかべた

今度は張り付けたような表情じゃなくて臨也さんが稀に見せる珍しい、本当の表情だった



「………臨也さん、なんなんですか」

「は? 何が」

「わざとですか、それだけやっといて自分は何も分かってない何て嫌がらせですか? 貴方はどんだけ鈍いんですか、それとも僕がこんな事言うのも計算のうち何ですか」

「ちょ、ちょっと帝人君? 何、意味分かんないんだけど」

「……っ、もういいです!」



あからさまに怒っているという態度で自分の荷物を抱えて店から出た

臨也さんは何か言っていたけど、臨也さんの事は無視した


きっと目には涙が滲んでいるのだろう
 
臨也さんには気付かれないといいな、と思いながら昼の池袋を走って家に帰った




ある日のランチタイム
(その日のランチはおいしくなかった)





 

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