long


□01
1ページ/1ページ

 







「臨也さん、」

「何?」

「何処に行くんですか」

「んー、いい所」



この会話を何回したんだろうか
数える気もしない


僕は臨也さんにデートをしようと誘われ、恋人同士だし断る理由もないので了承した

それに今日は12/24…俗に言うクリスマスイブだ

何処に行くのかぐらい教えてくれてもいいものだが、
さきからこの調子だ

臨也さんの言ういい所が僕にとってのいい所になる時なんか殆ど、…訂正 まったくないのだ
不安で仕方ない


何だかんだで30分は歩いただろうか

気が付いたら見慣れない場所に来ていた



「着いたよ」



着いた場所は ある建物の前

5階立てのビル見たいな建物だった

いかにも高級そうな感じが漂っている



「…何処ですか、ここ」

「いい所」



そんなあからさまに怪しい笑顔で言われても信用の欠片もないのだが



「じゃあ、行こっか」



僕が返事も何もしないうちに中に引っ張られた


中に入ってみると予想通り、高級そうな場所だった
 
赤い絨毯に高すぎる天井にはシャンデリアまである

ただ、中には人の気配がなかった

其どころか物一つない
広さは然程広くはなかったけど10畳以上はあった

あるといったらエレベーターが目の前に一つ



「…帰っていいですか」

「時間までまだあるからのんびりしてていいよ」

「スルーですか、そうですか」



時間とは何だろうか

現在の時刻は8:50
大体9:00ぐらいが時間だろうか


しかし こんないかにも怪しい場所で黙ってるわけにもいかず、どうしたものかと思考中
臨也さんがいきなり前触れもなくキスをしてきた
軽く触れるだけのキス



「…っ、臨也さ、ん…?」

「…帝人君」



明らかに様子がおかしい
何時もの彼なら軽く触れるだけのキス何てしてこないし
臨也さんの顔が、表情が何処か悲しいような寂しいような表情をしていた



「これ、持って行ってね」



だけど、さっきの微妙な表情は一瞬で何時もの笑顔に変わり、
何かを渡された

一枚の紙…メモのような物だった



「…臨也さん、これは…?」



二つに折り畳んであって書いてある事は分からないかったから
メモみたいなのをあけて見ようとしたら臨也さんに遮られた

あけようとしてた方の手を臨也さんに捕まれた



「帝人君、そろそろ時間だから」



そう言うなりいつの間に開いていたのかエレベーターに押された



「え…、臨也さ…」

「じゃあ頑張ってね帝人君」



てっきり臨也さんも乗るものだと思っていた
けど 臨也さんはその予想に反して僕だけをエレベーターに乗せた

閉まっていくエレベーターのドアの隙間から臨也さんが笑顔で手を振ってるのが見えた


…何を頑張れというのだ


―パタン
という音共にドアが閉まってしまった


…エレベーターの中は普通だった

相変わらず高級そうな赤い絨毯

普通と違うのはドアを開閉するボタンがないのと階のボタンの多さ

閉まったドアを開けようとボタンを探してたが、ないので諦めた

階のボタンは100階まであった
僕がさっき外から建物を見た時は5階までしかなかった気がする…

怪しすぎる

臨也さんの表情からしても明らかに何かを隠してるし


今日はクリスマスイブで、仮にも恋人である臨也さんと楽しく過ごすのが常識じゃないのか
そんな事を考えたが臨也さんに常識を求めるだけ無駄だろう
彼の存在自体が非常識何だから


ふと、さっき臨也さんに渡されたメモを思い出した

あけて見るとメモには
『16 29 101』
と書かれていた

…このメモに書いてある階に行けという事だろうか



「…絶対めんどくさい事になる」













その頃、臨也は――


「頑張ってね帝人君…
じゃないと俺達、死んじゃうから さ」






 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ