小説2
□寒い日も一緒に
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今日はなんというか、暖炉が欲しいくらいに寒い。外はとてつもなく冷たい風が吹いているし、廊下にでた途端に凍ってしまいそうになり、慌てて部屋に引き返して毛布に包まった。
「寒い…」
「俺だって寒い」
こたつ目当てに俺の部屋に来た風介だったが、残念ながら現在、俺の部屋にこたつは無い。
さっき、普段はこたつを使わないヒロトが、「守が遊びに来るから」とか言って引きずっていきやがった。もちろん、俺の意見は無視で。ったく、こっちの迷惑も考えて欲しい。
毛布に包まってもなお寒そうな風介。さすがに気の毒になってどうしようかと考え思い出した。
確か、朝ヒロトが作ったスープがあったような…
「ちょっと待っとけよ、風介」
「…晴矢、自ら凍りに行くのか?」
「なわけねぇだろ」
冷たい床の上を走ってキッチンへ行くと、やっぱりあった。
妙にかわいいデザインの(確かヒロトが買った)鍋に、おいしそうなコーンスープがはいっている。
適当に火にかけてあたためなおして、これまたファンシーな皿に注いだ。
当たり前だがゆげがたっていて、これ飲んだらあたたまるだろうなぁ…なんて考えながら急いで部屋に戻った。
「風介、コーンスープ持って来たぞ」
「…おいしそう」
毛布でもこもこになっている風介の表情こそいつもとあまりかわってはいないものの、その碧い目はい普段より嬉しそうで、なんだか俺まで嬉しくなった。
「いただきます」
風介は、服の袖から少しだけ手を出してスプーンを握り、あたたかいスープを飲み始めた。よほど寒かったのか、一口飲むたびにほっとしたような顔をして。それがかわいくて仕方なかった。こんなこと、風介に言ったら怒られそうだけどな。
しかし、まだその細い指先は震えが止まっていなかった。
「おいしい…」
「さすがヒロトって感じだな」
それは、店でも出せるんじゃないかってくらいおいしくて、あっという間に2人とも全部食べてしまった。
「ごちそうさま。ありがとう、晴矢。おかげであたたまったよ」
「ああ。…でも風介」
「なんだ?」
「実は、まだ寒いだろ?」
「!」
俺はそっと風介の震える手を握り締めた。それは、さっきのスープと正反対。まるで氷でもにぎっているかのように冷たくて。
「寒かったらさ、また俺のところに来い」
「……」
「ヒロトみてぇに美味しいスープもつくれねぇし、またこたつないかもしれないけど」
「晴、」
「こうやって、手、握ったり」
風介のもう片方の手もとり、俺のほうに毛布ごと抱き寄せた。
「抱きしめたりするくらいできるからさ」
な、と笑いかけると、「お前は暑苦しいからな」なんてかえされたけど、その言った風介はとてもやわらかく微笑んでいて。
寒さも悪くないかもな。なんてちょっとだけ思った。
「あれ?」
さっき守が帰ったから、借りていたこたつを返しに晴矢の部屋にはいったのだけれど、そこにはなんとも微笑ましい光景があった。
「なんか、小さい頃に戻ったみたいだね」
邪魔しちゃ悪いな、と思って俺は元の位置にこたつを戻してドアに向かった。
その前に、2人に毛布をかけなおして。
「いい夢みてね」
寄り添って寝てる2人に笑いかけて、俺は静かに部屋を出た。
寒い日も一緒に
書くの遅くなってしまいすみませんでした!
なんだか読んでいて寒くなりそうな話ですね…
いつもよりヒロトが多く登場しています。
雨蝶様、リクエストありがとうございました!
本人様のみ、お持ち帰りokです!
2010.10.29